第3352冊目 プロフェッショナルの条件――いかに成果をあげ、成長するか P・F. ドラッカー (著), Peter F. Drucker (原著), 上田 惇生 (翻訳)


  • 貢献を重視する


成果をあげるためには、貢献に焦点を合わせなければならない。手元の仕事から頭をあげ、目標に目を向けなければならない。「組織の成果に影響を与える貢献は何か」を自ら問わなければならない。すなわち、自らの責任を中心に据えなければならない。


貢献に焦点を合わせることこそ、成果をあげる鍵である。仕事の内容、水準、影響力において、あるいは、上司、同僚、部下との関係において、さらには会議や報告など日常の業務において、成果をあげる鍵である。


ところがほとんどの人が、下のほうに焦点を合わせたがる。成果ではなく、権限に焦点を合わせる。組織や上司が自分にしてくれるべきことや、自らがもつべき権限を気にする。その結果、本当の成果をあげられない。


あるコンサルタントは、新しい客と仕事をするときに、最初の数日間を使って先方の組織や歴史や社員について聞くなかで、「ところで、あなたは何をされていますか」と尋ねることにしているという。ほとんどの者が、「経理部長です」「販売の責任者です」と答える。時には、「部下が八五〇人います」と答える。「他の経営管理者たちが正しい決定を下せるよう情報を提供しています」「客が将来必要とする製品を考えています」「社長が行うことになる意思決定について考え、準備してます」などと答える者は、きわめて稀だという。


肩書や地位がいかに高くとも、権限に焦点を合わせる者は、自らが単に誰かの部下であることを告白しているにすぎない。これに対し、いかに若い新入りであろうと、貢献に焦点を合わせ、結果に責任をもつ者は、もっとも厳格な意味においてトップマネジメントである。組織全体の業績に責任をもとうとしているからである。


貢献に焦点を合わせることによって、専門分野や限定された技能や部門に対してでなく、組織全体の成果に注意を向けるようになる。成果が存在する唯一の場所である外の世界に注意を向けるようになる。自らの専門や自らの部下と組織全体や組織の目的との関係について、徹底的に考えざるをなくなる。経済的な財、政府と政策、医療サービスなど組織の産出物の究極の目的である客や患者の観点から、ものごとを考えざるをえなくなる。その結果、仕事や仕事の仕方が大きく変わっていく。