第3569冊目「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)

 

 

 

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

 

 

 

-自信

 

 

二〇年前ほど、女性で初めて神経外科教授になったフランセス・K・コンリー医師の行動分析をさせてもらったことがある。あるときコンリーは回診中の部下の研修医と行き合わせて、悪性脳腫瘍の患者について相談しはじめた。今日でも悪性脳腫瘍の治療はむずかしいが、二〇年も前のことだから、いま以上に治療の選択肢は限られていた。コンリーもいささか不安そうで、研修医にまで意見を求めたのである。だが患者の病室に入るときには、彼女の態度は一変していた。病状が深刻であることは否定しなかったし、予後について嘘をつくこともしなかったが、コンリー医師は自信のある落ち着いた態度で自分が最善と考える治療法を説明した。後でそのことについて質問すると、「病気にはブラセボ(偽薬)も効くし、ものの考え方や気の持ちようも効く。だから、患者を落ち込ませたり、絶望させたりしないよう気を配っている」とのことだった。もし医師が自信なげだったら、患者は不安になるだろう。そして、あやしげな民間治療にすがるなど、好ましくない行動に走るかもしれない。

 

 

組織での地位や肩書きは権力や影響力の源泉となるが、現実には、あなたの地位を知らない第三者あるいは同僚と仕事をする場面が多いだろう。そんなとき相手は、あなたが信頼に足る人物かどうかを見きわめようとする。そこでぐいついてはいけない。あなたという人物をどの程度重んじるべきか、どこまで任せても大丈夫かを決めるにあたって相手が注目するのは、外に表れる行動や態度である。権力や影響力を持っている人は自信たっぷりにふるまうでの、逆に自信ありげな言動を見ると「この人にはきっと力があるのだろう」と考えやすい。したがって自信のある態度を示し、それに見合う知識を備えていれば、影響力を獲得することができる。