第3560冊目「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)

 

 

 

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

 

 

 

-あなたの存在を気づかせよ

 

 

地位のある人は、経営のことでも自分のことでも忙しい。つまり上司は、そもそもあなた自身にもあなたの仕事ぶりにもあまり注意を払っていないのである。上司は自分のことを気にかけているとか、日頃の仕事ぶりをよく見ているなどと考えてはいけない。したがって、しかるべき評価を得るためには、まず自分が何者でどんな仕事をしているのか、気づいてもらう必要がある。そのためにいちばんいいのは、話すことだ。

 

 

とは言え組織の中で目立つのは、古人の教えに反する。私は日本で初めて知り、その後ヨーロッパでも聞いたのだが、「出る杭は打たれる」という諺があるらしい。この諺は広く人口に膾炙しており、組織の中に溶け込み悪目立ちしないようにふるまう人が多い。たしかにこの諺に従った方がよい場面はあるだろうけれども、キャリア形成の観点からはお奨めできない。

 

 

上へ行くためには、上の人に存在を知らせ、評価してもらわなければならない。いくらよい仕事をしていても、目に付かない人は認めてもらえない。目立たないとどうなるか、ある学生は次にように的確に言い表した。

 

 

「私はいなくなって初めて気づかれるような人間で、いるときには目立ちません。だから自分は土台男です。どんな家にも土台は必要で、土台のない家は成り立たない。しかし土台は地中深くに埋もれています。ほとんどの場合に土台はしっかりと役割を全うしますが、気づかれることはありません。黙って粛々と、効率的かつ効果的に仕事をこなし、しかし脚光を浴びることはなく、気づかれずに終わる。こういう人間はひっそりと着実に仕事をこなし、ミドルマネジャーとしてすばらしいキャリアを築くでしょう。しかしもっと上に行けるかと言えば、答はノーです」