第3306冊目 「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)  ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • あなたの存在を気づかせよ


地位のある人は、経営のことでも自分のことでも忙しい。つまり上司は、そもそもあなた自身にも、あなたの仕事ぶりにもあまり注意を払っていないのである。上司は自分のことに気をかけているとか、日頃の仕事ぶりをよく見ているなどと考えてはいけない。したがって、しかるべき評価を得るためには、まずは自分が何者でどんな仕事をしているのか、気づいてもらう必要がある。そのためにいちばんいいのは、話すことだ。


とは言え組織の中で目立つのは、古人の教えに反する。私は日本で初めて知り、その後ヨーロッパでも聞いたのだが、「出る杭は打たれる」という諺があるらしい。この諺は広く人口に膾炙しており、組織の中に溶け込み悪目立ちしないようにふるまる人が多い。たしかにこの諺に従った方がよい場面はあるだろうけれども、キャリア形成の観点からはお奨めできない。


上に行くためには、上の人に存在を知らせ、評価してもらわなければならない。いくらよい仕事をしていても、目に付かない人は認めてもらえない。目立たないとどうなるか、ある学生は次にように的確に言い表した。


「私はいなくなって初めて気づかれるような人間で、いるときには目立ちません。だから自分は土台男です。どんな家にも土台は必要で、土台のない家は成り立たない。しかし土台は地中深くに埋もれています。ほとんどの場合に土台はしっかりと役割を全うしますが、気づかれることはありません。黙って粛々と、効率的かつ仕事をこなし、しかし脚光を浴びるようことはなく、気づかれずに終わる。こういう人間はひっそりと着実に仕事をこなし、ミドルマネジャーとしてすばらしいキャリアを気づくでしょう。しかしもっと上に行けるかと言えば、答はノーです」