第3268冊目 家族のためのユマニチュード: “その人らしさ”を取り戻す、優しい認知症ケア  イヴ・ジネスト (著), ロゼット・マレスッティ (著), 本田 美和子 (著)


家族のためのユマニチュード: “その人らしさ

家族のためのユマニチュード: “その人らしさ"を取り戻す、優しい認知症ケア

  • どこかへ行ってしまおうとする


ご家族の介護をしていらっしゃる方が、しばしばご経験になることに「何度も同じことをたずねられて困る」ということがあります。そもそも、認知症の記憶の特徴として「短期記憶」が長くもたないということがありました。ご家族にとっては10回答えていることであっても、ご本人にとっては初めてたずねる質問なのです。そうわかっていても、たずねられる回数が増えれば、だんだんイライラしてくるご家族のお気持ちもよくわかります。


そのほかにも、どこかへ行ってしまおうとしたり、同じことをくり返すこともよく起こります。



原因は共通している


これらは一見、全く違うことのように見えますが、その原因は共通している可能性があります。それはご本人が「今、自分は不安だ」と感じていらっしゃることの表現かもしれないということです。


何度も同じ質問が続くときや、どこかへ行ってしまおうとするとき、また同じことをくり返してくるときには、「ああ、今落ちつかないんだな、心配なんだな」と考えて、その不安な気持ちを取り除くように工夫します。ここでも記憶の特徴を思い出してください。「手続き記憶」や「感情記憶」はご本人にとってよく知っている安心できる思い出です。


ご本人が自信を持ってできること、たとえばタオルや着物をたたんだり、庭の手入れをしたりすることを提案することもよいかもしれませんし、ご本人の楽しい思い出について話したり、思い出に関わるものを一緒に見たりすることで、安心してもらうことができます。