第3259冊目 家族のためのユマニチュード: “その人らしさ”を取り戻す、優しい認知症ケア  イヴ・ジネスト (著), ロゼット・マレスコッティ (著), 本田 美和子 (著)


家族のためのユマニチュード: “その人らしさ

家族のためのユマニチュード: “その人らしさ"を取り戻す、優しい認知症ケア

  • 私たちの存在が薬となる


近年、アイコンタクトや触れることによって人間の体内に生理学的な変化が生じることがわかってきました。


オキシトシンは、出産時の子宮の収縮や母乳の分泌に関与するホルモンですが、最近ではそれだけではない働きを持つことがわかってきました。オキシトシンの分泌によって不安感が低下したり、相手との信頼関係を構築することが解明され、いわば「愛情と信頼のホルモン」であることが発見されたのです。


これは人工的に合成したオキシトシンを吸入することで起こる変化で明らかになったのですが、大変興味深いことに、人工的に合成した薬剤を使わなくても、アイコンタクトや触れることよってオキシトシンが分泌されていることがわかってきました。


つまり、アイコンタクトをとったり、触れたりすることで、相手の体内でオキシトシンが分泌され、愛情や信頼を感じるようになるのです。


私たちが相手に対して行うコミュニケーションが生理学的な変化をもたらすのであれば、私たちの存在自体が相手にとって薬となります。アイコンタクトをとるたびに、相手に優しくしっかりと触れるたびに、気分がよくなる薬を飲んでもらっているのと同じ効果を生むことができるのです。さらに、この効果は双方向性で、アイコンタクトをとったり、触れたりしている私たちにも同様に起こっています。


つまり、私たちもまた、介護を受けている方から生理学的な影響を受けています。アイコンタクトや触れることで、私たちは互いに愛情と信頼のお贈り物を交わしています。これがよい関係を結ぶ基礎となり、「あなたのことを大切に思っています」と伝え合うことを可能にするのです。