第3225冊目 負けてたまるか! 若者のための仕事論 丹羽 宇一郎 (著)
- 作者: 丹羽宇一郎
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2010/04/13
- メディア: 新書
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- 人間の底地=労働×時間
人は褒められれば嬉しいものです。ますますがんばろうという意欲もわいてくる。これは人間の自然な感情でしょう。しかし気をつけなければいけないのは、「何のために仕事をしているのか」ということです。
自分が褒められるため?
周りから認めてもらうため?
こんなことのために仕事をしていたら、褒められるために上司にゴマをすり、周りに対するアピールだけがうまい、つまらない人間になってしまいかねません。
人間にはさまざまな可能性が秘められているのに、自分一人の優越感のために働くとは、人間を小さくしてしまう。もったいないことです。
私はつねづね、「人は仕事で磨かれる」と思っています。がむしゃらに、そここそアリのように働いていると、その経験が自分の血となり肉となるのです。すると、「俺は絶対に負けないぞ」という自負心が生まれてきます。この自負心が、仕事における人間の「底力」になるのです。
底力をつくるのは、「労働×時間」です。ただだか三〇分や一時間、苦労したところで、自信にはつながりません。もっと長期的に、苦しくても仕事を「何くそ」と思って歯を食いしばりながら続けていくことに意味があるのです。
私はこれを、米国駐在時代に味わいました。当時の私は、日本はもとより、ノルウェーやデンマーク、ドイツ、オランダなど世界各国を相手に大豆の取引をしていました。ヨーロッパとは六、七時間の時差がありますから、早朝から仕事の電話で起こされます。向こうは昼でもこちらは早朝です。だから職場に行く前に家で一仕事を終えます。そうこうするうちにシカゴの穀物取引がオープンし、夜は夜で日本を相手にした仕事をします。私は、米国大豆の輸出入を一手に引き受けていたのです。
そんな状態で、ひとときも気持ちの休まることはありません。猛烈に働きました。また、土日も出勤していましたから、東京の本社では「あいつは身体を壊すんじゃないか」と心配したようです。そのうち日本から若いスタッフをアシスタントとして送ってくれましたので、今度はその若いのをこき使いました。
そのときの経験から、私は自分の仕事に自信を持つようになりました。「俺はこれだけのことをやったんだ」という自負心です。「俺の代わりにやれるもんならやってみろ」という気持ちでいたのです。
ただ、それを周りに吹聴したりはしません。そんなものはただの自慢したがり屋で、自負心とは言いません。内に秘めた自信を自負心と言うのです。