第3224冊目 負けてたまるか! 若者のための仕事論  丹羽 宇一郎 (著)


負けてたまるか! 若者のための仕事論 (朝日新書)

負けてたまるか! 若者のための仕事論 (朝日新書)

  • 川上哲治さんの教え――DNAのランプを灯すには


人間の能力には、ほとんど差がないと私は思っています。よく「自分のこの仕事には向いていない」といった言葉を耳にしますが、私からすれば決してそんなことはありません。人は皆、何事でもできる能力を備えているのです。ただ、気分がのらないとか、その気になるかならないかの違いだけです。


たとえば「私は新聞記者を目指したいのだけど、文章が上手ではないから向いていないのではないか」とか、「私は営業をやってみたいけど、人見知りするから向いていないのではないか」などといった具合に、多くの若い人は考えるようです。取り組む前から、能力がないかどうかを問題にして、「あれはダメ」「これもダメ」と選択肢を狭めてしまう。じつにもったいないことです。


もちろん、目指した分野でどこまで上達するかは、適正の部分が大きいでしょう。しかし、ある程度のレベルまでは、自分の努力次第といっていい。それ以上のレベル、たとえばイチロー選手のようになろうと思ったら、よほど適性がないと難しいかもしれません。


でも、イチロー選手のようになれないから諦めるのか。私は、それは違うと思います。「適性のない人」は、営々と努力してようやく、わずかな努力でも成し遂げられる「適性のある人」に近づくというだけのことです。営々と努力を続けていたら、いつか才能を開花させるときが来る。私の言葉で言えば、DNAのランプがポッとつくのです。DNAのランプというのは、誰もが持っている才能をイメージした言葉で、そのランプが灯る、つまり才能が花開くかどうかは努力次第というわけで、向いているからやる、向いていないからやらない、ということではないのです。