第3224冊目 負けてたまるか! 若者のための仕事論  丹羽 宇一郎 (著)


負けてたまるか! 若者のための仕事論 (朝日新書)

負けてたまるか! 若者のための仕事論 (朝日新書)

  • 私が生涯に一度だけ、「偉くなりたい」と思ったとき


偉くなりたいと思う人は、自分の良心に照らして恥じることがないか、恥を曝してまで偉くなりたいか、そこのところを考えてみてほしいと思います。品格を持って生きることです。


もっとも私は、生涯に一度だけ「偉くなりたい」と思ったことがあります。まだヒラの取締役だったときのことです。会議で自分の意見が正しいと思って発言しても、「ヒラの取締役の分際で何を言うか」「お前に言われる筋合いはない」などと代表権を持った人たちに言われてしまいました。私もはっきりとものを言うタイプですから、生意気だと思われていたのでしょう。


しかし「筋合いがない」というのもおかしな話で、問題は「筋合い」があるかどうかよりも、何が正しいかということです。それなのに代表権がないというだけで私の発言は黙殺されてしまう。「今に見ておれ」と、このとき初めて、偉くならなければダメだと感じました。自分のためではありません。自分が正しいと思う発言を通すために、代表権を持つ常務になれなければ、と感じたのです。後にも先にも、偉くなりたいと思ったのはこのときだけです。


エリートだとかリーダーというのは、それが目的になっているうちは本物ではないし、嫌なやつでしかありません。部下の喜びを自分のこと以上に喜べるかどうか。もちろん最初からそんな神様みたいな人はいないでしょうが、少なくともそうした気持ちをもたなければならないということです。


私だって、そりゃ自分が大事。赤の他人よりも、家族のほうが大事です。しかし会社のトップという立場で社員のことを考えたとき、彼らの喜びが自分の喜びより勝るものなのです。また、そうでなければなりません。