第3223冊目 負けてたまるか! 若者のための仕事論  丹羽 宇一郎 (著)


負けてたまるか! 若者のための仕事論 (朝日新書)

負けてたまるか! 若者のための仕事論 (朝日新書)

  • どんなに優秀な人でも、ミスをすることは当たり前


上司に叱られて落ち込まない人はいないと思います。しかし新入社員のときは、誰だって叱られるものです。何も知らないのだから当たり前、私も幾度となく叱られました。


もちろんミスもたくさんする。けれど、ミスそのものを反省したら、もう落ち込む必要はありません。誰でもミスはするものです。自分だけが特別に失敗ばかりするなんて、そんな人はそういません。


上司からしてみると、「そろそろこいつはミスをするぞ」というのがわかります。疲れが出てくるとか、この時期になると仕事がマンネリ化して手を抜きがちだといった具合に、おおよその見当がつくのです。自分も通ってきた道ですし、これまでの部下も同じようなものですから、だいたい先のことが見えるわけです。ついでに、「ああ、こいつはそろそろ隠しごとをするようになるぞ」というのもわかります。


私は、優秀な人間ほど隠しごとをすると思っているんです。自分も周りも優秀だと思っているでしょう。本人は自分の名誉を傷つけなくない。周りから「あいつもfつうの人間か」と思われたくない。だから、必死になって隠すわけです。


ところが、どんなに優秀な人間だってミスをする生き物です。決して間違っていないと思っていたって、そもそもの考えが間違っている。人間は間違いを犯す動物なんだから、絶対に間違っていないということはあり得ないのです。


ハインリッヒの法則」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。一つの重大事故の背後には、二九の軽い事故があり、その背景には三〇〇の「ヒヤリやハッとする出来事」が存在しているというものです。つまり、周りにいくつも存在している「ヒヤリとする出来事」、言い換えれば「アレッ?と思う程度の異常」を見逃して入ると、それが重大な事故につながるということです。


逆に言えば、そういう小さなことに気づいて改善したのなら、重大な事故を起こさずに済むわけです。したがって、小さなミスをたくさんしたほうがいい。「しまった」と思って反省すれば、大事に至らずに済むからです。これが、少しもミスをしない、あるいはミスをしてもこの程度のことかと隠してそのままにしておくと、取り返しのつかない事故を引き起こしてしまいます。


だからミスをして怒られ、たとえ落ち込んでも、そう考えて頭を切り替えればいい。


ただし、同じミスを何度も繰り返したらダメです。最初のミスから何も学んでいないとうことになります。