第3202冊目その話し方では軽すぎます! 矢野 香 (著)


その話し方では軽すぎます!  エグゼクティブが鍛えている『人前で話す技法』

その話し方では軽すぎます!  エグゼクティブが鍛えている『人前で話す技法』

  • 「句読点」で反応する


先に、相手の話を聞きながら、相づちの代わりに、「うん、うん」と何度も頷く人は軽いと述べました。その人を信頼できるかどうかは、話をするときよりもむしろ、話の聞き手に回ったときの方が顕著になります。


とある企業幹部のインタビューでのことです。幹部が話している間中ずっと、一言一句逃すまいとメモを取っている記者がいました。しかも、目は幹部の顔に向けたまま、左手の中におさまった記者手帳に、右手ですらすらとペンを走らせてします。目線がメモに落ちないのです。まるでパソコンのブラインドタッチのようでした。


私は幹部のスピーチトレーナーとして立ち会っていましたが、器用なことをする記者の方だなと思って見ていました。話し手である幹部も気になったらしく、


「メモを取る間、一度話を止めましょうか」


とおっしゃいました。すると記者は、


「大丈夫です。カメラも回っていますから」


と答えのです。えっ? わからないところは、後ほど録画で確認するという意味? では、その必死で書いているメモは、何のため?


メモを足らないのは論外ですが、絶えずメモを取っているのも好ましくありません。その場で相手の情報を理解していない証拠になるからです。


メモは大事なところだけ取るのです。


もっと細かく言うと、相手が大事なことを発言したときの「句読点」でメモを取ります。聞き手がメモを取り始めると話し手は、話す速度を緩める間をとって、メモを取り終えるのを待ってくれるはずです。大事にしていただきたいのは、リズムなのです。


コミュニケーションにおいて重要なのは、あうんの呼吸、リズムです。そして話し方におけるリズムは、意味の切れ目である「句読点」なのです。ですから、自分が話し手の場合、息づきや瞬きをするタイミングは句読点、自分が聞き手である場合は、相づちやメモを取るタイミングは句読点なのです。


相手の話を聞くということは、餅つきと一緒です。餅つきでは、杵でもちをつく人と合いの手をいれる人がいます。合いの手を入れる人はついている人のリズムを読んで、サッと入れて持ちを返します。失敗すると自分の手を杵で叩かれてしまいます。


同じように話の聞き手も、話し手のリズムを読んで句読点で相づちを打ったり、メモを取ったりして呼応していただきいのです。