第3036冊目 心を上手に透視する方法 トルステン・ハーフェナー (著),‎ 福原美穂子 (翻訳)


心を上手に透視する方法

心を上手に透視する方法

  • 相手の話し方・言葉遣いに合わせて話す


あなたが話をしている相手の話し方を、注意して聞いてみよう。


相手がよく外来語を使うなら、それを覚えておくように。相手がメタファー(隠喩)を使うなら、あなたもメタファーを使ってバリエーションを増やすように。相手が視覚的、聴覚的、触運動的なイメージのどのタイプなのかに合わせて、またその状況に合わせて話すように。相手も同じ言葉の使い方をして話していたら、あなたと相手はお互いよく理解できるようになるだろう。


一つの例を挙げよう。


僕が初のツアーを行ったとき、英語の表現を使うのが好きなマネージャーがいた。ドイツ語で言えることでも、彼は英語の単語を使う。たとえばツアーの日程表には、観客が開場に入場する時刻を明示するのに、ドイツ語で「開場」と書くところ、彼は「Doors open」とメモした。


不愉快な思いをしたのは、その英語の表現が不必要だったばかりではなく、間違っていたときだ。それも、ときにはやっかいな出来事も起きた。


スイス・バーゼルで公演を行った日のことを、一生忘れられない。僕は、契約書に書かれていた、劇場があるなずの住所まで車で向かった。そして劇場があるはずの通りに近づいたとき、そこに劇場があるとは信じられなかった。


僕はバーゼルの風俗街にたどり着いたのだ。何もかも、奇妙な気がした。あきらかに女性たちがサービスを提供する建物の前に立っていたからだ。「ここでショーは行わない」と、僕が言ったのは後ろにも先にもこのときだけだ。


僕はひどく困惑して、当時のマネージャーに連絡し、いったいどうなっているのかと尋ねた。彼はひどく仰天した。マネージャーはすでに予定通り劇場に着いていて、何もおかしなことはないはずだと繰り返すばかりだった。その後、どういうことなのかがわかった。


契約書には、「イベント会場」と書く代わりに、英語で「Venue(開場)」と書いてあった。


店の主人でもある劇場の所有者は、「Venue」という店名の店を経営していて、これが彼の店のことだと勘違いをした。僕がたどり着いた建物の地下に、偶然、彼の経営するバーが入っていたのだ。


これ以来、僕は何でも英語で表現するのが好きではなくなり、なるべく避けるようにしている。


それでも当時のマネージャーと話をするときは、「彼の」英語の言葉をよく使っていた。彼の言葉遣いを使って、僕が伝えた情報が彼の確実に伝わるようにしたかたったからだ。これも、会話も自分のコントロール下に置くことと関係がある。