第3032冊目 心を上手に透視する方法 トルステン・ハーフェナー (著),‎ 福原美穂子 (翻訳)


心を上手に透視する方法

心を上手に透視する方法

  • 二つの指示を組み合わせると、相手は言うことを聞く


あるアンケートで、一番怖いことは何かという調査が行われた。調査結果が分析され、十番目までリストアップされた。二番目は、「死」である。「死」が二番というのは誤植ではなく、まぎれもない事実である。


ではいったい、死ぬよりも怖いことは何なのだろうか。一番怖いのは、「大勢の人の前に立ち、スピーチをしなければならないこと」だった。これが、人々がもっとも恐れていことなのだ。


アメリカのコメディアン、ジェリー・サインフェルドはこのことを「つまり、誰かの葬式で人前に立って弔辞のスピーチを行うよりも、自分が棺おけに横たわるほうがましだってことさ……」と的確に表現した。


この認識をもとにすると、ショーで実験を行うときに、いつもスムーズに観客の誰かにステージに上がってもらえるわけではないことが想像できるだろう。控えめに「前に出てきていただけますか?」と客席に聞いて回るだけでは、心優しい観客の人が同意してくれるまで、長いこと探し回らなければならないだろう。普通はこのような要求にはできれば応じたくないと思うものなのだ。


しかし僕自身は、実験の協力者を見つけるのにあまり苦労したことがない。効果的な作戦を使うからだ。


効果的な作戦とは何か。それは、「箱入り文」という言い方を使うことだ。


たとえば「どうぞ前に出てきてください」と言う代わりに、「立ち上がって、どうぞ前に出てきてください」と言う。


違いがわかるだろうか。指示を一つ一つ出すだけなら、どうれも断られるかもしれないのに、二つの指示を組み合わせたとたん、どちらの指示も実行してもらえるのだ。