第2974目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)


アーサーは私の良き友人であり、どこに行っても権威のカリスマを発揮する典型的なリーダーだ。私たちは共通の友人で知り合った。その友人は私がカリスマを研究していると知っていて、「この男にはぜひ会っておくべきだ」と言った。彼の言うとりだった。


アーサーは私の研究に協力して、やり手のカリスマの振る舞いをじっくり観察させてくれた。ある日、私はレストランのテラス席でブランチをしていた。アーサーはエッグ・ベネディクト、私はポーチド・エッグとサーモンを注文した。食事席に彼は突然、身を乗り出して言った。「カリスマには副作用があるんだ」


アーサーにとって、カリスマの最も危険な副作用は、自分が完全に間違っているときも人々を説得できることだ。「自分は正しいと確信して、その問題が自分にとって重要なときは、どんなことでも周りを説得できてしまう。でも正直なところ、私がつねに彼らより正しいはずがない。論理的な議論に、感情と情熱とカリスマが加わると、突然、誰もが私の言っていることが正しいと思ってしまう」


アーサーは、自分のチームと仕事をするときは意識的にカリスマを抑えられるようになった。大切な議論をしているときは、自分のカリスマを圧倒しないように「手すり」を築いて一歩下がるようにしている。「自分の言葉に説得力があり、いかに客観的に公平に見ることはわかっていたが、実はどれも違うのだと気がついた。大きなパワーは大きな責任感を伴う。最近は昔に比べて、自分の決断を後悔することもずいぶん増えた」


あなたのカリスマが高まり、ものごとがあなたにとって良い方向に展開しはじめると、周囲も同じように順調なのだろうと推測する危険がある。しかし、誰もがあなたと同じカリスマを手にしたわけではないのだ。


超人的な存在だと思われることは、あなたの組織や会社全体にも影響を及ぼす。周囲のあなたの特別な資質に頼るようになり、何でもうまくいくと考える。あなたがいれば、自分たちはもう必死に働かなくてもいいとさえ感じるかもしれない。自分は責任感から解放されたいと思い、現状に甘んじるかもしれない。あるいは、自信過剰になって、本来なら敬遠するリスクも取ろうとするかもしれない。何か問題が起きても、あなたが魔法のように解決してくれるだろうから。