第2964目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

  • 間をおいて、息をして、ゆっくり


人生で初めてスピーチをする日の朝、私は目が覚めたときから自信にあふれていた。同級生に、地元の小児病院で献血をしようとすすめる簡単なスピーチだった。講義が始まる前の5分間を与えられていたから、満席の聴衆の前に立つことはわかっていたが、いい目的について手短に語るのは簡単そうに思えた。私は当時18歳。1200人を前に立った経験は一度もなかったが、たいしたことではないと思っていた。みんなの注目を浴びたら、自信たっぷりに壇上を目指すのが楽しみでたまらなかった。


ところが、いざ階段に足をかけると、1歩ごとに胸の高鳴りが激しくなった。壇上に着いたころには息が止まりそうな気さえした。聴衆のほうを向いたとき、私は愕然とした。どちらを向いても顔ばかり、1200組の目が期待を込めて私を見ていたのだ。パニックで頭が真っ白になり、ほとんど息を継がずにしゃべりつづけた。念のため言っておくと、これは好ましくない例だ。スピーチを終えたときには目の前がちかちかして、ほとんど何も見えなかった。どうやって壇上から降りたのか、今でも覚えていない。