第2963目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

  • 誠意を伝える


フランクリン・ルーズベルトはすべてを変えた。少なくとも、大統領のスピーチのあるべき姿を変えた。


当時、大統領の演説は単調にしゃべる公式行事だった。しかし、ルーズベルトはラジオで国民に語りかける「炉辺談話」を始めた。大統領の話を聞くことが、心温まる親密な会話になったのだ。こんにちでも優秀な演説家は、暖炉の前でおしゃべりしているような雰囲気を真似している。聴衆がどんなに多くても、私たちは自分に1対1で語りかけられているように思う。


炉辺でのおしゃべりは、親近感が流れる心地よい会話になる。ステージの上ではなく、暖炉のそばに座って親友と1対1で気持ちよく話をしているつもりになろう。秘密を打ち明けるかのように話しかけ、聴衆に自分たちが特別な存在になのだと思わせる。


聴衆に自分たちは特別だと思わせるコツがもうひとつある。ステージを歩きまわりながら、ひとりひとりと1〜2秒ずつアイコンタクトを取るのだ。一瞬のようだが、スピーチの最中は永遠に思える。カリスマ的なスピーカーがあなたに直接語りかけているように感じさせるのも、このテクニックだ。本当の意味でつながっていると感じさせるのだ。聴衆の中でいちばん夢中になっていそうな人と目を合わせると、このテクニックを使いやすくなる。笑顔の人や、興味深く聞いている人、うなずいている人を探そう。


自分と会社の将来を決めるプレゼンテーションの準備をしているデービッドは、このような安心感と親近感を演出するために、誠意を示すことを最優先させた。彼は5章で説明した精神状態を整えるツールを活用し、とくに天使の羽のイメージトレーニングを重視した。プレゼンテーションをする相手を、一緒に働くために集まってくれた自分の天使だと想像したのだ。すると、誠意のある自信を感じ、聴衆に対する親愛の情が急激に高まった。その気持ちが外面に表れれば、聴衆もすぐに気づくだろう。


デービッドはさらに、声の変化で説得力を高めるようにした。誠意のこもった声にしたいときは笑顔になり、自信と権威を伝えたいときは抑揚を抑えた。


プレゼンテーションを終えた数時間後に、彼は大成功だと電話で私に報告してくれた。その後も何日も、人々が彼のものとに来て称賛を伝えたという。