第2949目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

  • 目は心の窓


会話の最中に、相手がずっと自分の肩の後ろを見ているという経験はないだろうか。自分より重要な人か興味深い人が現れたかのように。そんなふうに視線が泳ぐことは、間違いなくカリスマ的ではない。


アイコンタクトはとても重要な要素だ。心のこもったアイコンタクトは、他人に強力な影響を及ぼす。共感を伝え、思慮深さや賢さや知性といった印象を与える。アイコンタクト抜きではカリスマにはなれない。カリスマの達人にとってアイコンタクトは、自分がその場で最も大切な存在だと思わせる強力な武器となる。


人類学者のヘレン・フィッシャーによれば、誰かをじっと見つめていると心拍数が上がり、血液中にフェニルチアミン(PEA)が分泌される。PEAはひとめぼれを引き起こす恋愛ホルモンだ。


ある実験で、初対面の人同士を向かい合わせ、相手がまばたきした回数を数えさせた(知っている人とじっと見つめ合うと普通はぎこちない感覚が生じるが、それを感じにくい状況を設定した)。すると数分のうちに、被験者は互いに好意が高まり、情熱的な気持ちを抱く人さえいた。もちろんやりすぎは危険だが、アイコンタクトは明らかに効果がある。


目は、非言語コミュニケーションの最も重要なツールだろう。「目は心の窓」と言われるのは、顔の中でいちばんよく動くパーツであり、したがって表情が最も豊かに表れるからだ。


会話をしている相手がサングラスをかけていたら、表情を読むのは難しい。ポーカーのプロプレーヤーには、サングラスをかける人も少なくない。ギリシャの海運王アリストテレス・オナシスは、難しい商談の際にサングラスをかけ、考えていることを悟られないようにした。


じっと見つめ合っていた相手が目をそらすと、脳の中で「分離不安」と呼ばれるメカニズムが機能する。そうした不安を予防するためには、やりとりの終わりにたっぷり3秒間、見つめ合うといい。短い時間のようだが、実際にやってみると永遠に思えるだろう。練習して習慣づければ、努力にふさわしい見返りがある。わずか数秒の投資で、相手はあなたが自分に心から注意を払ってくれていると感じるのだ。