第2946目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)


私が話す番が来たので、少しだけ体を動かし、片手をテーブルに置いて横を向きました。ナサンの動きを真似ていたのですが、自分にとって自然な動きだと思えました。ナサンは明らかに私の行動に気がついていませんでした。私はミラーリングをしているうちに、その場の雰囲気に馴染んで落ち着いてきました。


話が盛り上がったところで、私はナサンに、今回の提携をどう思っているかと訊きました。彼は立ち上がり、私のほうを向いて、要所でテーブルを津から強くたたきながら話しはじめました。私はがっかりしました。彼の意見は、私たちの期待とかけ離れていたのです。それでも私は口を挟まず、話を最後まで聞きました。そして私の番になると、立ち上がって彼のほうを向き、「私たちはこう思っています」と切り出しました。重要なところでは、ナサンと同じようにテーブルをたたきました。


すると、驚くような展開になりました。ナサンが立ち上がり、部屋を見回して、私たちの要望にすべて同意したのです。まったく期待していなかったことまで実現しました。信じられなかった。今でも信じられません。すべてがミラーリングのおかげかどうかわかりませんが、最初から最後まで、あんな打ち合わせは初めて経験しました。何もかも希望どおりになって、何ひとつあきらめなくて済んだのです。私たちにとって最も重要な契約となりました。