第2845冊目 私の財産告白 本多 静六 (著)
- 作者: 本多静六
- 出版社/メーカー: 日本経営合理化協会出版局
- 発売日: 2000/01/01
- メディア: 単行本
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- 難しい人の叱り方
さらにまた、人の上に立って最も苦心を要するのは、人の叱り方、諭し方である。
人間はだんだん古参になったり、年老いてくると、自然人に対する小言が多くなる。また小言をいわねばならぬ立場にもなってくる。そこで、この二つがごちゃごちゃになって、しかも自分のわがままもまざってくることになるから、よくよく気をつけなければならない。いいかえれば、部下に対して小言がいいたくなり、叱りたくなった場合は、まずそれを自分の上に当てはめてみて、自ら第一に反省するくらいに慎重に期さねばならぬのである。
由来、賞賛は春の雨のごとく、叱責は秋の霜のごとしである。褒めることは人を生き返らせ、のびのびとさせるが、小言はどうも人を傷つけ、萎縮させることが多い。だから、小言を人に言う場合も、称揚することを八分、注意することを二分、といった程度に心を用いるとかえって効果があるようである。子供のしつけ方についても、「三つ褒めて一つ叱れ」といった言葉もある。
したがって、私もその伝でいって、いつも人を叱らねばならぬ場合は、まずその人の長所を挙げて、それを補うべき一事宛をよく注意することにしてきた。たとえば、君はこれこれの点は実にエライが、ただ一つこういうことになるとちょっとマズイ、だから、これこれのことを改めさえすれば実に綿上花を添えるわけになる、どうか気をつけたまえ、といったように。