第2770冊目 人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)  谷原 誠 (著)


人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)

人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)

  • 視点を変える質問でよりよい解決策を


弁護士は、誰かの代理人になって、その人の代弁をします。お金を貸した人の代理人になれば、借りた人に対して「金を返せ」と言います。逆に借りた人の代理人になれば「金は返せん!」と言います。


私たちは、依頼人の立場に立ち、依頼人の利害を考え、依頼人が最大限の利益を得るように活動を行うことが求められているのです。


ただ、私たち弁護士は、依頼人の観点からのみ事件を眺めているわけではありません。相手はこの事件をどう見ているか、どんな主張をしてきそうか、など、相手の立場に立って事件を眺めてもみます。また、将来裁判になったら、判断するのは裁判官になりますので、双方の言い分が真っ向から対立した場合、「裁判官は、この事件をどう見るだろう?」と、裁判官の立場に立って事件を眺めてもみます。


このような作業を行うと、依頼人の立場からのみ考えているときには考えもつかない視点を得ることができます。そのような視点を持つことにより、依頼人に有利な戦略を立てることができ、交渉や裁判を有利に展開することができる場合があります。


つまり、弁護士は、次の3つの立場に立って事件を眺めることになります。

  1. 依頼人の立場
  2. 相手の立場
  3. 裁判官の立場


このように、全方位的に事件を検討することにより、争点を予測することができ、結果的に依頼人に最大限の利益をもたらすことができるのです。


このテクニックを、日常の問題解決にも応用することができます。


何か問題が起こったとき、悩み事があるときには、自分の立場だけでなく、全方位的に検討してみるのです。


たとえば、人間関係で悩んでいるときは、

  1. 自分の立場から考える(これは自然にできます)
  2. 相手の立場から考える


相手が置かれた立場から考えると、自分との関係はどう対応するのか、相手の性格からすると、自分をどう見ているか、自分のこれまでの態度を相手はどう感じているか、など。


2人のやりとりについて、第三者にはどう見えるか


などです。
「第三者」をさらに広げることもできます。弁護士の場合には、第三者は「裁判官」になるのですが、日常の問題を裁判官の立場から考える必要はありません。

  1. 父親だったら、どう考えるか。
  2. 母親だったら、どう考えるか。
  3. 親友の○○だったら、どう考えるか。
  4. 夫、あるいは妻だったら、どう考えるか。
  5. 全く関係ない第三者が見たら、どう考えるか。
  6. 尊敬する坂本龍馬だったら、どう考えるか。


など、色々な観点から検討することができるでしょう。そして、このようなことを行うと、自分には大変重要なことだと思えていた問題が、実はそれほど重要な問題ではなく、ただ単に自分のエゴに過ぎなかった、とうようなことも多くあるのです。


このように、自分以外の人の立場に立って物事を考えてみることを「チェンジアングル」と言います。問題の当事者になってしまうと、どうしても物事を冷静に見えることができなくなります。チェンジアングルにより、一度自分の外に出て考えることで、冷静さを取り戻し、よりよい解決に進んでゆくことができるでしょう。