第2769冊目 人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)  谷原 誠 (著)


人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)

人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)

  • 問題解決のための8つのクエスチョン


生きていると、様々な問題が発生します。「この問題だけは解決するのは不可能ではないか」という問題も発生します。時には死にたくなることもあるかもしれません。私は会社が倒産した時の倒産処理の仕事も行いますが、その過程で、社長さんが自殺をしてしまったことがあります。中小企業の社長さんは、自分で立ち上げた会社は自分の分身だと思っています。自分の人生そのものです。その会社が倒産するということは、人生も倒産するということです。莫大な借金を抱え、負債を処理して、今後家族を守って生きてゆくといことは、大きな問題です。「解決できっこない」という気持ちになるのも無理のないところでしょう。そして、生命保険に家族の残りの人生を託し、自ら命を絶ってしまったのです。


そのとき、私は言いようのない無力感に襲われました。社長さんが自殺するほんの数日前、私の事務所で打ち合わせをしているのです。「なぜ気がつかなかったのか」と私は自分を責めました。社長さんの異変に私が気づいていれば、解決の仕方もあったように思えてなりません。


事業の失敗して会社を倒産させてしまうこともあります。経営能力の問題もあるかもしれませんが、どうしようもないことだってありあす。会社を倒産させ、何億もの負債を背負っても、その後必死に頑張って全部借金を返済し、不死鳥のように蘇る人もいます。やむなく破産し、その後転職して家族で力を合わせて一生懸命生き抜いている人もいます。


自殺をしてしまった社長さんと、復活を遂げた社長さんの違いは何でしょうか。


それは、自分への質問です。自殺をしてしまった社長さんは、「なんで俺がこんな目にあわなきゃならないんだ? これだけ負債を負ってしまったらどうしようもない。家族も、おしまいではないか?」とネガティブに考え、負債の問題を解決できない前提で、家族を守るために自分の命と引き換えに生命保険金を家族に残す道を選びました。復活を遂げた社長さんは、「この負債を返済するには、どういう方法があるか? いつまでにいくらずつ返済していけばよいのか? 誰に相談すれば解決策のヒントをくれるのか?」とポジティブに考え、問題を解決できる前提で自分に質問したでしょう。この自分に対する質問力が明暗を分けたのです。


人生でどんな問題が発生しようと、解決できない問題はありません。シェイクスピアは言っています。「世の中には幸も不幸もない。ただ、考え方でどうにでもなるのだ」。必ず問題は解決し、そして私たちの人生は進んでゆくのです。大切なことは決して諦めないことです。そして、自分にポジティブな質問をすることです。