第2757冊目 人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)  谷原 誠 (著)


人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)

人を動かす質問力 (角川oneテーマ21 C 171)

  • 説得したければ、質問を!


物理学に、「作用・反作用の法則」があります。ある方向に力が働くと、必ずその反対方向にも同じ力が働く、という法則です。この法則は人の心にも同じように働きます。人に何かを押しつけようとすると、同じ力で反抗しようとするのです。


私は小学生のころ、成績はそれほど悪くはなかったのですが、やはり勉強するのが嫌でした。親から「宿題はやったの?」と言われると、とたんにやる気がなくなってしまい、「なんだよ。今やるところだったのに、もうやる気がなくなった」と言って反抗していました。もちろん自分では、勉強しなければならないことはわかっています。しかし、人から押しつけられると、その通りやりたくないというのが人間の性質なのです。ところが、「誠、この間の国語のテストは90点か〜。頑張ったな。嬉しいよ。どんな勉強したんだ?」。こう言われると、嬉しくて、また良い点を取りたくなって自らすすんで勉強してしまいます。説得されている感じも、押しつけられている感じも、しなかったからです。


人から命令されたり説得されたりすると、自己の重要感が低下し、自尊心が傷つきます。人は他人から命令されたことに従いたくありませんが、自分で思いついたことには喜んで従います。したがって、人を説得するときは、説得していることを悟られないようにしましょう。大原則です。そして、自分から思いついて決断するようにし向けるのです。そのためには質問することです。


ある会社で、ある時、大きな注文が取れそうでした。ところが指定の期日までに納品するには、従業員が連日残業しないと到底不可能な状態でした。ここで、社長が仕事を勝手に引き受け、「みんな、これから3週間は休ませない。毎日残業をしてもらう」と宣言したらどうでしょう? 当然猛反発を食らいます。


しかし、社長は、全員を集め、静かに語りかけました。


「実は、このような注文が来ている。通常の業務スケジュールでやっていたら、到底指定の期日までに納品するのは不可能だ。だから断ってもいい。でも、その注文を取ることができたら、その後大きな契約を取ることができ、会社が発展し、皆の地位も安定するし、給料が上がるだろう」


その上で、「この注文をどうやったら、納期までに間に合わせることができるだろうか?」と質問をしました。すると、従業員たちは、納期に間に合わせるためのアイデアを次々を出し、結局この注文を受けるべきだと主張しました。会社から押しつけられる仕事から、自分たちの仕事になった瞬間です。そして、皆で力をあわせて納品し、会社は発展することになったそうです。