第2705冊目 FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学 ジョー・ナヴァロ (著), トニ・シアラ・ポインター (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

  • 手――第一印象がものを言う


人は生き残りのために、動くものに反応する。そして人間の賢い手は、命を育む(食べ物を与える、抱く、揺すってあやす)ことも、致命傷を与える(殴る、えぐる、殺す)こともできるので、私たちは俊敏に動く手には気を配るように進化してきた。身の安全を守るために手の動きをよくチェックしているから、誰かの手の第一印象が、その人を判断する材料になる。


手の清潔を保つことを心がけよう。人には、健康的で繁栄しそうに見える相手と同盟を結ぶ原始的な欲求がある。手で健全さを表現する必要があり、いつもきれいにして(爪の内側も忘れずに)、神経質に肌をいじりまわした跡や、噛んでキザキザになった爪などが見えないようにしなければならない。それらは不安な気持ちを連想させる。


仕事が医療関係(医師その他の医療専門家など)、食品関係(レストランの接客係など)、金融関係(銀行員、資産管理専門家など)なら、特に手の手入れは大切だ。販売の担当者は、顧客に商品を見せる際の手の重要性を意識する必要がある。私が知っている宝石商は、自分の手をいつも美しく、それでも控え目に手入れし、顧客に見せる高価な商品を囲んで引き立てる役割を果たすことを意識している。さまざまな調査の結果によれば、何よりもうんざりするのは爪を伸ばした男性だという。男性は手の爪を短くし、磨かずにおくほうがいい。


マニキュアを楽しむ女性なら、爪の長さはほどほどにするように。あくまでも爪であり、かぎ爪ではないのだ。長すぎる爪はビジネスの世界では受け入れられない。私個人の好き嫌いの問題ではなく、いくつもの消費者グループ調査で、男性と女性のどちらにも長い爪はとても不評なことが明らかになっている。


両手はいつも相手から見えるようにしておくこと。すでに述べたように、私たちは大脳辺縁系の働きによって、相手の手が何をしようとしているのかを見定めている。治安に携わる者は、特にこの意識に磨きをかけてきた。私はFBIを退職して何年も経つ今になってもまだ、近づいてくる人の手をチェックしてしまう。警察官ならよく知っているように、自分のことを傷つけることができるのは、相手の手だけだ(ちなみに、警官から停車を命じられた際には、すぐに車の窓をあけ、両手の手のひらを上にしてハンドルの上にのせるようにしよう。警官はその態度のとても好ましく思うから、時にはチケットを切られずにすむかもしれない)。


私は企業幹部に、手を役立てるようにと話している。状況によっては、(たとえば思いやりを示すときなどは)手をあまり動かさずにおおくが、たいていの場合は大いに活用するといい。手を使わない人や相手に見せない人は、よく使う人、相手に見せる人ほど、好感をもたれない。最も説得力のある講演会の講師は、手を使って聴衆の注意を引き、大切なポイントを強調し、忘れられない感情のこもったメッセージを伝えるらるように訓練されている。


人を管理あるいは商品を販売しようとするなら、腕と手の使いかたを学んでほしい。腕と手は、伝えようとしているメッセージの象徴にも、考えをひとまとめにする額縁にも、話のリズムをとる指揮棒にも、思いやりを見せるクッションにも、強さの証拠にも、そして必要な場所では謙虚さを示す掲示板にもなる。


プライベートな場なら、いっしょにいる人の動か方をよく見て、同じ程度に動かせば、快適で信頼感のあふれた雰囲気を作ることができる。同調性には調和をもたらすことを忘れないように。また、体に触れるのが快適な状況にも注目しよう。仕事の場では、触れることが非常に効果的な状況が数多くある。大切なポイントを強調する。注意を引く、相手の話に割って入る。誰かが演壇に上がるのを助ける、祝う、など。適切で、コミュニケーションの効果を高めるならが、触れるべきだ。


腕と手についてもうひとつ覚えておくべきことに、指さしに関する注意がある。人は指されるのを嫌い、文化によっては、指さしはきわめて攻撃的だと見なされる。だから判断がつかないときには、指をさしてはいけない。賢明なやりかたは、手のひら全体を縦に使って方向をさすもので、手のひらを上にするとさらにいい。同じように注意を引いて、より温かく感じられる。