第2682冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・ェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

  • 本番中には教えず、思い出させる


本番中のコーチングは役に立つが、本番中に「教える」のは気が散って逆効果だ。学びながら、同時に実演することはできない。練習によってスキルは無意識のうちに自然に出てくるようになるが、本番中に教えようとすると、この過程が混乱する。本番中におこなうコーチングは、練習で教えてきたことを思い出させて、補強するだけにすべきだ。教えるのは練習のあいだにして、本番中はやるべきことを伝えるために短く、前向きなことばで思い出させる。


練習は、本番のリスクを背負わずにコーチングをする余地を与えてくれる。プロテニスでは、公式戦のあいだ、いかなるコーチングも(教えも)受けられない。ほかのプロスポーツとのちがいは際立つ昔ながらのルールだ。もっとも物議をかもす変わったルールのひとつでもあり、伝統主義者はそのルールを歓迎するが、白熱した議論も呼んでいる。選手が外部からルールに反する指導を受けたと疑われる例はあとを絶たない。もっとも有名なのは、2006年のUSオープンで、マリア・シャラポアの父親が彼女に食べることを思い出させようと、手にしたバナナを持ち上げたことだ。視覚的な合図の送ったのは、実質的に指導だった。


私たちの学校では、教師のコーチがときどき似たような戦略を使う。まず2種類の色つきカードを持って、教室の後方に立つ。赤いカードは手を上げている生徒を指名せよ、黄色いカードはクラス全体に唱和させよ、と合図するものだ。こうした注意喚起は、教師が練習してきたスキルを反映している。本番の授業中に新しいスキルを教えることはない。