第2681冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・ェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

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このアイデアをほかの状況にも応用すると、本番中に使ってもらいたい具体的なスキルを並べた「チェックリスト」を作ることができる。それをまず練習で使い(たとえば、ワイル・コーネル医科大学の「SPE(患者の標準診察)のなかの患者のチェックリストのように)、練習のあとは、本番で使用したスキルの具体的な観察と評価にも使う。そうしてデータを積み重ねれば、もっと練習が必要なスキルを知る手がかりにもなる。


練習のあとで、的を絞って整理した観察をおこなうと、初歩の部分からすばやく、効率的に抜け出すことができ、最終的には行動の持続的な変化につながる。私たちのワークショップでは、(いきなり指名)のテクニックについて、教室で使うまえに教師に練習してもらうだけでなく、スクールリーダーにも「観察する」練習をしてもらう。教師が(いきなり指名)を使っているビデオをリーダーたちに見せ、リーダーたちは、必要なスキルをリスト化したテンプレートを参照しながら、観察する。これによって、このテクニックの細かい点を識別する練習ができる。練習のあとでスキルの観察方法を練習すべきである。


この整理された観察方法を本人にあらかじめ伝えておくことによって、もう一段階、強力にすることができる。こんなふうに伝えてみよう。「今日の授業(プレー/手術/演奏)を観察させてもらいます。集中していない生徒の行動をどんなふうに指導するか(ボールをしっかり体の正面で受けるか/傷口を正しく縫合するか/はっきりと正確に音階を演奏できるか)、注意して見るつもりです」。観察が予測できることから、彼らは進んで目標に向かうことができる。何を見られるかわかっているので、観察者がただいるというだけで、責任を持って取り組む。もはや新しいテクニックを試しなさいと念を押す必要はない――責任をとるメカニズムがないときに実行を求めるのは不誠実だ。「観察」という行為によって、本番中に練習の成果を探されることが誠実かつオープンに知らされる。


アンコモン・スクールズのもっともすぐれた学校では、観察のプロセスは次のようになる。まず、授業の参観は校長の職務なので、教師は全員、練習しているテクニックを観察するために校長が一定間隔で教室に来ることを知っている。校長は先述した観察用のツールを使うか、たんに、練習したスキルを確認するため2週間以内に授業を見学させてもらうと伝える。チェックリストを使うことはあまりないが、とにかくこうして教師は取り組むべきことを事前に知らされる。以上の手順で、教師たちが練習から本番の授業に移ったあとも、個別のスキルについて次々と効率よくフィードバックが与えられていく。教師が練習で学んだことを、責任を持って実行に移す効果もある(前向きな支援を受けながらだ)。また、予測可能なこの手順によって、校長と教師はともに協力して向上するという共通の目的に取り組み、教師はさらに本番の授業で練習を積むという、成功への道筋ができる。


マネジャーはあらゆる場所に同時にはいられないし、すべてのスキルをつねに観察することもできない。そこで役立つのがビデオだ。自分の行動を見て、正しいことを探し出せる。行動中の姿を撮影すれば、みずから成長する能力を伸ばすことができる。特定の行動(プレゼンテーション、セールストーク、宣誓証言、数学の授業、大学のゼミ)を5分間撮影し、必要なスキルが実行できたか考えさせる。何を試したか、何が難しかったか。驚いたことはあるか。成功を探すだけではいけない。うまくいかなかったことを探し、支援する方法も考えなければならない。従業員には安心してまちがいってもらいたい(ルール31)。本番中に新しいスキルを試しているところをビデオに撮って提出してもらえば、スキルの定着に役立つ。ビデオに撮るとなれば、みな責任を持ってスキルを使うし、むずかしいときにいかにスキルを効果的に使うかといった会話が生まれるからだ。