第2674冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・ェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

  • 練習を楽しくする


練習にはそもそも楽しい面がある。しかし、楽しい部分が上達に役立たないとしたら、どうすればいいのだろう。アマチュアゴルフ選手や趣味のゴルファーは、打ちっぱなしの練習場でプロのような気分になったことがあるはず――ボールをいくらでも遠く、まっすぐ打てる。そして翌日コースに出てると、練習場で成功したことがスコアカードに反映されていないのに気づいてがっかりする。ニューヨーク・タイムズ誌のブログで、PGA(全米プロゴルフ協会)の2003年最優秀コーチに選ばれたレイヤード・スモールは、その理由について次のように語っている。「練習場ではゴルフボールを打つ」が、「コースではショットを打たなければならない」。練習場では、趣味のゴルファーはバケツ1杯25個程度のボールを、30分間ほどで打ってしまうかもしれない。そして多くの場合、クラブをしまいながら、すばらしい練習をしたと満足する。ところが、プロが練習場に行くと、本番をシミュレーションしながら打つので、同じ時間でその半分しか打たない。フィル・ミケルソンのコーチであり、タイガー・ウッズも指導したことがあるブッチ・ハーモンは、平均的ゴルファーはプロが打ちっぱなしで練習するところを見るだけでも、多くことが学べると指摘する。「同じクラブを使って、同じ場所に、次から次へとボールを打つようなゴルフを誰がする? そんな人はいないよね。だったら、どうしてそんな練習をするんだろう」。


とはいえ、趣味のゴルファーなら誰しも、ドライバーを高々と振り上げて、「ピューン!」と当たるというよい結果がすぐに返ってくるのは、バンカーショットやアプローチショットの練習よりずっと楽しいと言うだろう。しかし、ゴルフコースの成績にもっとも影響するのは、そうしたショットなのだ。どちらもゴルフコーチとして全米トップテンに入るマイク・ベンダーとレイヤード・スモールは、練習方法の簡単な変更を提案している。ショートゲームを楽しく練習させると、みな練習したがるようになり、スコアの数字も下がるのだ(ゴルフでは数字が小さいほどよい)。自分自身、または友人と競争させる。12メートルのパットを連続して何回入れられるか、バンカーなら2ショットでどちらがピンに近づけるか、または、グリーン上に置いたコインに何回で当てられるか。上達に必要なスキルを練習を楽しいものにする。


練習は懲罰であってはならない。楽しくするために時間をかけて創造力を発揮すれば、純粋に楽しいだけでなく、「これは、時間をかける価値のあるよいものだ」という重要なメッセージも伝わるから、みな参加する気になる。


上達や成長のために習得しなければならない多くのことは、ゴルフのショートゲームのように厳しい。しかし、ほかのことについては、退屈だからと抵抗するかもしれない。メイビス・ビーコンは、タイピングの学習をゲームにすることで、楽しいものに変えた(タイピングは学びはじめがじつに退屈だ)。彼女が作ったプログラム「メイビス・ベーコンが教えるタイピング」は、異なるスピードで正確さを測るテストからなり、1分間でタイプできる単語数を記録しつづける。スピードを競うゲームもついている。スピードと正確さを向上させようと異なる文章をただ何度もタイピングするだけでは、初心者の学習意欲は高まらない。しかし、文字を打ち込んで、カーレースでアニメの車を競争させり、ゲームのキャラクターと同じ文章のタイピングを競い合ったりすれば、練習はかぜん楽しく、やる気が湧くものになる。学習者は練習したがり、結果として長時間、たくさん練習する。