第2664冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・ェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

  • フィードバックのループを短くする


ジョシュア・フォアの「ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由」(エクスナレッジ)で、医学における興味深いデータが紹介されている。医師は日々練習をくり返すことで上達していくと思われるかもしれないが、そうではないことが多い。マンモグラフィーの専門医を例にあげると、年々診断の精度が「下がる」傾向がある。なぜか。患者の撮影画像を観察して診断を下したあと、フィードバックが戻ってくるのに時間がかかるからだと指摘する。自分が下した診断が正しかったかどうかがわかるのは、数週間後から数ヵ月後であり、その時点で自分が診断したときのことはくわしく思い出せない可能性が高い。それに、みずからの正否を決定づけるデータを一刻も早く知りたいとは、あまり思っていないのだろう。もちろん医師が患者のことをとても気にかけているのは変わらないが、診察を受ける若い母親はそれほど深刻そうに見えず、彼らの心にあまり切迫感を与えないのかもしれない。


フィードバックでは「スピード」がきわめて重要だ――おそらくその成功を決定する最大の要素である。イギリス人のスポッターを思い出してほしい。あの訓練の重要な要素のひとつは、フィードバックが数秒以内に返ってくることだ。行動は反応の直感的な結びつきが非常に強かったので、誰にも解決策が説明できない「ブラックボックス」的状況さえも乗り越えられたのだ。


行動の変化においては、結果の「速度」が結果の「強さ」をほぼつねに打ち負かす。行動を変えたいなら――練習で行動を戦略的、意図的に改善したいなら――フィードバックのループを短くすることだ。参加者に「すぐに」フィードバックを与える。たとえあとでもっとくわしいフィードバックを与えらるとしても、すぐに与えるほうがパフォーマンスははるかに向上する。もっとも重要なのは、スピードなのだ。


ジョン・ウッデンはこれにこだわることで有名だった。かつて彼の指導を受けた選手が「修正はすぐしなければ無駄になるとウッデンは確信していた」と述べている。数分もたてば、選手の心と体はそのときの状況を忘れてしまう。ひとたびまちがって練習してしまえば、窓は急速に閉じ、修正は役に立たなくなる。練習を設計するときには、可能なかぎりフィードバックをループを短くして、すばやく頻繁にフィードバックをおこなうようにする。成功に結びつく最良の方法は、計画のなかにフィードバックを規則正しく組みこむことだ。


私たちの同僚のロブ・リチャードは、最近オートバイの教習を受けてそのことを学んだ。たとえ練習中であっても、ひとつのまちがいが惨事につながりかねないので、その教習は迅速なフィードバックを受けられるように設計されていたという。教官はふたりいて、ひとりが実演と説明をおこない、教習生を障害物のある短いコースに送りこむ。ふたりめの教官はそのコースの終点で待ち構えていて、ロブが走り終えるなり、すぐにフィードバックを与えた。その気になればもっとくわしい説明もできただろうし、あとで読み返せるように記録に残すことも可能だったかもしれないが、あえてそうせず、ロブをただちにコースに戻すことを選んだ。運転技術が修正されないままでは危険であることを、車を運転するほとんどの人は理解していないが、経験を積んだライダーは理解しているので、ロブがヘルメットを脱ぐまえにフィードバックを与えようと待っていたのだ。