第2663冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・ェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

  • フィードバックを使うために大事なのは、与えられたフィードバックを使うのが当たりまえで、使いたくなるような文化を創ることだ。そこには参加者の責任感がある。スタッフにはフィードバックを与えあと、すぐにどう思うか、役に立つかなどと聞いてはいけない。代わりに、スタッフがフィードバックを「試した」ときにうまくいったか、何回試したか、今度はいつどこで試したいかと聞くのだ。


最近私たちはワークショップでこの課題に取り組んだ。典型的なワークショップでは、参加者が授業のシミュレーションでロールプレイをおこなう。ひとりが「教師」役、テーブルを囲んだほかの仲間が「生徒」役になる。「教師」は訓練したばかりのテクニックを2、3分間試し、そのあと仲間からフィードバックをもらう。


そこで気づいたのは、何度かくり返さなければならないということだ。練習で苦労して、フィードバックをもらい、もう一度やる。それでもなお、グループのメンバーからもらうフィードバックがいかに役立つか気づかないことが多かった。悩んでいるときに仲間が何か提案しても(やれば格段によくなる小さなアイデアが多い)、「教師」は微笑んでうなずき、それでおしまいにする。そうして貴重なアドバイスは宙に浮いてしまった。


練習するうちに、もうひとつ役割が必要なことがわかり、「コーチ」役を追加した。「コーチ」は「教師」の「よい」面をひとつ、「提案」する面をひとつ見つけ出す。よい面とは、すばらしいので続けるべきだと思うこと、提案する面とは、もっとうまく、またはちがうやり方でできたと思うことだ。ロールプレイを開始して2分でやめ、「コーチ」がフィードバックを与える。「教師」は、必要ならば内容を確認するごく短い質問をして、そのフィードバックを使ったロールプレイを最初からやり直す。


この仕組みのよい点は、暗黙のうちに責任感が生まれることだ。つまり、フィードバックを無視するのがむずかしくなる。まわりの6、7人がフィードバックを聞いていて、そのまえですぐフィードバックを試すことを求められるからだ。実際に試さなければ失礼になる。もうひとつのすぐれた点は、フィードバックのあと、ロールプレイをまた最初から同じ状況でやり直すことだ。続きから始めたのでは、前回フィードバックを必要とした条件が出てこないかもしれない。最初からくり返すことで、フィードバックを確実に利用するきかっけになる。3つめのよい点は、与えたフィードバックが効果的だったか「コーチ」がすぐに確認できることだ。効果的なフィードバックを与えるのがひとつの職務である教育者の訓練だから、このことは重要になる。