第2662冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・ェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

  • フィードバックを取り入れて練習する


人はつねにフィードバックを受けている。少年野球チームの子供も、(願わくば)会社の部下も。つまり、みなフィードバックの「受け方」はかなり練習している。目を合わせてうなぶき、言いわけに聞こえないように受け答えし、メモすらとるかもしれない。真剣に受け止めていますよと合図を送ってくるかもしれないが、受けたフィードバックを「使う」とはかぎらない。時間とともフィードバックを取り入れるのがうまくなるともかぎらず、むしろ逆になるかもしれない。フィードバックをうまく受け流す方法を身につけてしまうのだ。


著者であるわれわれ3人もそうしていた。打ち合わせで同僚が出したアイデアをせっせと書き留めたり、感謝の意を表して熱心にうなずいたりはするが、部屋を出ればそのアドバイスを無視するかもしれない。たとえばアドバイスにしたがつもりでも、やるべきほかのことにかまけて忘れたり、言われたとおりに少しやってみて、もう充分進歩したとか、フィードバックが適切でなかっとか、自分に言い聞かせたりするかもしれない。


よくあることだ。人はめったにフィードバックを「使って」練習しない。むしろ時がたつにつれて、フィードバックを無視したり巧妙にかわしたりするのがうまくなる。そのことを練習しているからだ。「いや、それはちょっとできないな」、「ああ、どうも、でももう試しましたよ」、「すごくうあめになった。ありがとう」(その後何もせず)というふうに。


フィードバックを使うことは、練習すればうまくなる。何事もやれば上達するものだ。たとえば、誰かのアドバイスを自分のスタイルに合わせて取り入れる方法や、一度に2つか3つの主要なアイデアに集中する方法、むずかしそうに思えることに思いきって試す方法などを学ぶのだ。


フィードバックの使い方が上達する――コーチングを受け入れる――ことは、広範囲に影響を与えるスキルだ。フィードバックを使って上達していることがわかれば、みな練習とフィードバックを信じるようになる。別の理由からも、成長カーブが上昇しつづける可能性が高い。ジョシュア・フォアが記憶を研究して書いた「ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由」(エクスナレッジ)のなかで説明しているように、人は日々練習しているにもかかわらず、成長が止まる「プラトー(高原)状態」になることがある。「技術を上達させる秘訣は、練習中に意識的に技術をコントロールしつづける、つまり自動操作にならないようにすることだ」とフォアは書いている。意図的にフィードバックをおこなうことによって、練習中つねに意識の高い状態が保たれ、より早く上達できるのだ。


教師は専門能力開発訓練に満足しておらず、役に立つとも思っていないという調査結果がいつも出ている。因果関係は双方向だ――人々が信頼しないから訓練が役に立たず、訓練が役に立たないから人々が信頼しない。けれども、もし訓練がうまくいって上達が感じられれば、誰もが訓練を信用して、真剣に取り組むようになる。