第2661冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・ェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

  • ビデオを活用する


練習中に手本を自演するのはすばらしいことだ。状況に応じて柔軟に対応できる。だが、悲惨な結果に終わることもある。湿気が楽器の音程を狂わせることも、雨でボールがすべりやすくなることも、いっしょに手本を示す相手がまったく予期しなかったカーブを投げてくることもある。伝えるべきことを正確に伝えないなら、手本にはチャンピオンが実演しているビデオを使うのがいちばん安全だ。


ビデオなら編集で余計な部分はカットして、見せたい部分だけを見せることができる。強調すべきテクニックを霞ませるところは省けばいい。さらに、手本をくわしく学ぶために、必要なだけ切り分けたり、スロー再生したり、くり返したりすることが可能だ。何を言ったか。どんなふうに言ったか、ことばを使わないで何を伝えたかなど、段階ごとにちがった面に集中して練習できる。新人のところにほかの従業員を送りこんで手本を示してもらいたい、それが期待に添うものだったかを心配するより、期待どおりの手本を映したビデオを新人に見せて、感想を聞くほうがいい。大事な点を見落としていたら、ふたたびビデオを見せて、双方納得がいくまで修正させる。


練習の出発点で、ビデオは手本としてさまざまに活用することができる。私たちはすぐれた教師を何時間分も撮影して、とりわけ優秀なものを30秒単位で編集した。この作業に多くの時間を費やしたのは、それだけの価値があったからだ。ビデオを使って手本を示した結果、3つの州にまたがるアンコン・スクールズの才気あふれる教師のあいだで、最高のテクニックが急速に広まった。教師たちはビデオで見た手本を応用して、さらに改善したので、彼らのいっそう質の高い手本をビデオに収めたりすることができた。手本の共有が簡単になったという事情もある――ボストンやロチェスターの教師が出向かなくても、インターネットのさまざまな画像共有サイトのビデオを見れば、大勢の教師がたちまち質の高い手本に接して、テクニックを学べるようになった。


編集したビデオが最高傑作でなければ役に立たないということではない。質を向上させる時間や専門知識がないのであれば、代わりに量を増やせばいい。カメラをまわしておいて、すばらしい手本が生じる瞬間を逃さないようにする。それをコンピューターに保存して、ほかのスタッフとすぐに共有するのだ。たとえば、毎週のスタッフミーティングで(「今週デニスがしたことを見てださい――お客様との打ち合わせはこうでなくては」)、あるいは電子メール経由で(「ビデオの冒頭20秒間に注目――先週学んだスキルをデニスをが使っています。何が機能しているのか、おのおの金曜の終わりまでに返信してください。デニス、すばらしい!」)。


誰かの手本をほかの人の学習に使う回数を増やすだけで、最高のパフォーマンスに間する正確な理解と会話が広がる。さらに踏みこんでそうした瞬間をビデオに収めれば、組織内のすべての従業員と、これから雇って育てる才能のために、手本の記録を残すことになるのだ。