第2652冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・ェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

  • スキルに名前をつけて共有する


起業間もない会社(そして親になりたての人たち)はみな、名前をつけることの大切さをよく認識している。新しい社名をつけるときには、たいへんな時間と、ときには少なからぬ費用をかけて完璧な名前を探す。自分たちが何者であり、また何者でないのかをはっきりと表すような、すばらしい業績を残そうとがんばるスタッフを元気づけるような、自分たちが提供する人々を引き寄せるような、そんな名前を選ぶ。平凡で使い古されたものは避ける。なぜなら名前は会社の針路を決めるからであり、今後成長し変化しても、そのすばらしい姿にふさわしい名前でありつづけてほしいからだ。


名前が持つ力ははっきりわかっているのに、チームを育成するときにはその重大な役割を無視しがちだ。日々使うスキルには名前をつけ、いちばん大事なスキルに独自の略称を与えるのは、ひとつの大きなチャンスだ。よく考えて、練習しているスキルや反復練習にぴったりの名前をつければ、強力なツールになる――強力すぎて拒否も無視できなくなるほどのツールに。


分離して練習したいスキルに名前をつけることは、チームに共通するひとつの言語を作るということだ。高度なパフォーマンスにつながるスキルについて、スタッフが時間をかけて話し合い、集中して取り組むのなら、名前は論理的で憶えやすいほうがいい。(100パーセント)というテクニックは、たとえば「全員」と名づけられた場合よりずっと力強い。そのテクニックについて話し合うときには、かならず(100パーセント)と言う。「全員」ではとても言い表せないテクニックの力強さを表現し、補強する名前だ。もちろん名づけるまえにスキルそのものを見つけなければならないが、見つけるだけでいい名前はつかない。同様に、スキルを根本的に、分析せず、たんに名前をつけても、上達したい人に明確に伝えることはできない。スキルの識別と命名の組み合わせが、効果的な練習の設計につながるのだ。一連のもっとも重要なテクニックに名前をつけることで、才能開発に役立つ強力な略語になり、同時に、非常に効率のよい管理ツールにもなる――つねに不足しているもっとも大切な資源、すなわち「時間」が節約できるからだ。共通言語ができることによって、より多くの才能を育てる効率性が生まれる。


練習をするうちに自然に名前が出てくることもあるが、最高の名前はじっくり考えてつけたいものであることが多い。同じ言語を使って仲間意識を高めるために、本来むずかしくないことをややこしく表現したり、気のきいた印象を与えようとする業界用語ふうの名前にはしたくない。意味を築き、支え、増幅さえする名前と、使うほどに意味があいまいになる無機質な業界用語とのあいだには、大きなちがいがある。明確なメッセージを押しのけて意味をぼんやりさせる業界用語の落とし穴にはまらないように。また、誤用されて、もとの考え方が希薄になってしまったことば(たとえば「シナジー」)も、意味が伝わらなくなる。こうしたあやまちを避けるためには、テクニックの描写は具体的に、その名前は明確な意味を伝えるものにしなければならない。さらに名前の使用は、意味に食いちがいが生じないように監視し、補強していかなければならない。


名づけの影響力はさらに広がる。たとえば校長が「Teach Like Champion」のテクニックを自在に操り、個々の授業について議論するときに日常的に使うようになると、そのスキルの分類自体が、思考のひとつの枠組みとして、授業の観察や分析に影響を与えるのだ。校長は新米教師が同席する報告会でも、その枠組みを用いて授業を分析するので、かならずそれらのテクニックが話題になる。


じっくり時間をかけて、重要なスキルにふさわしい力強い名前をつけること。そして人を育成するときにその名前を使い、ほこりをかぶった状態にしないことだ。行動の成果について話し合うときには、かならずその名前を使わせる。チームメンバー全体がそれらの名前を同じ意味で使っているかどうかに注意し、使っていないときには訂正する。名前が人によってちがう意味にならないように、最適なものを考え出すのに労力を使う。これによって、練習を設計する際に名前のパワーを活用することができる。