第2649冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・ェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

  • 批評ではなく、正しい方法でやり直しを求める


練習についてジョン・ウッデンが語ったことのなかに、まちがいはかならず修正しなければならないというのがある。なるほどとばかりに、練習中に選手がミスをするたびに脇へ呼んで、「カットはもっと速く鋭くだ、ルイーザ!」と言いたくなるかもしれない。これですばらしい結果が得られるだろうか。得られるかもしれない。しかし、ウッデンがやったのは「修正」であって「批評で」ではない。ちがいは、批評はよりよりやり方を伝えるが、修正はさらに踏みこんで、できるだけすぐによりよい方法でやり直させるということだ。したがって、理想的な練習では、選手はすぐさま列に戻って、もっと鋭いカットを練習する。もちがえていたものを正しくできるようになったときだけ、「修正」ができたことになる。これまで指摘してきたとおり、練習はさまざまな場合での反復を通して、脳に習慣を刻みこむものである。本番でとる行動は練習でやってきたことにほかならない。だから、たんに間違っていると伝える「批評」はあまり役に立たない。正しくやり直す「修正」だけが、成功するための訓練になるのだ。


身体の神経回路には時間の感覚がほとんどないことを思い出してもらいない。正しくやっても、まちがえても、平等に神経回路に組みこまれる。脳にとっては、どちらが先だったかは関係ない。割合は1対1だ。つまり、修正は2回以上おこなわなければならないということだ。テニス選手がバックハンドミスをミスしたとする。そのあと1回正しく打てば、まちがいは帳消しになるが、すぐに3、4回続けて正しく打てば、まちがいの記憶が正しいものに塗り替えられる。練習で選手のまちがいを修正したあと、こんなふうに言ってみてはどうだろう。「よし、いいぞ、じゃあ、いまのやり方であと5回やろう」。


ルール4で、バスケットボールの反復連取の教師バージョンを説明した。教師は(説得)というテクニックを使って生徒の姿勢を正す練習をする。その練習を複数回、多くはやり方を変えながらくり返し、だらけた生徒を身ぶりや口調できちんと座らせることを学ぶ。


この練習をしていたとき、私たちはフィードバックする批評を受けたから修正するまでに時間があきすぎることに気づいた。参加者は私たちのフィードバックを聞き――「手は対称に動かして、首はできるだけ傾けずに」――列の最後にまわる。これでは時間がなくなってやり直せないことも、やり直すときにはもう記憶が薄れてしまっていることもあった。そこで私たちは手順に変更を加え、フィードバックのあとすぐにやり直せるように、列の最後でなく先頭にまわすことにした。これで参加者はすぐにまた試して、わずか1分で自分が上達したのを感じられるようになった。これが批評を修正に変えた例である。しかもすばやく修正し、その場で結果を確認している。


もうひとつ注意してほしいのは、修正のプロセスにかならずもコーチが必要でないことだ。標準以下のパフォーマンスを観察し、より効果的に、理想的には何度もやり直す「自己修正」は、いつでも、誰でもできる。