第2644冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・ェッツイ (著)


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

  • 目的を目標を置き換える


練習するときには誰もが目的を持っている。しかし、それを本物の成果に結びつけたいなら、焦点を絞った明確な目標に置き換えなければならない。ことばの言い換えにすぎないと思うかもしれないが、「目標」は次の4つの点で「目的」と異なる。


第一に、目標は計測できる。「目的」の場合、たとえばパスまわしなど、何をしたいかがわかっていればいいが、「目標」の場合には、練習が終わったときに何ができるようになっているか、具体的に決まっていなければならない(たとえば「グラウンドで20メートル離れたところから正確にパスができる」)。目標は計測できるので、練習終了時に観察するか簡単なテストをおこなえば、きちんと教えられたかどうかがわかる。漠然と1時間練習しても、パスができるようになったかどうかはわからない。これに対して、グラウンドで20メートル離れたところから毎回同じようにパスができるかどうかは確認できる。それを計測すると、さらに具体化できるかもしれない。(たとえば「グランドで20メートル離れたところから正確にパスができ、受ける選手は10回中8回はポジションを修正しないですむ」)。目標をしっかり組み立て、計測可能なものにすることで、選手の技能と指導の効果をはっきりと把握して、基準を高くすることができる(「10回中8回成功するまで続けよう」)。


第二に、目標は管理できる。目標は一定時間内に達成しなければいけないものだ。パスのスキルは1時間の練習では身につかない。状況に応じた微妙な加減や細かい技は何年もかけて習得するものだが、すでに学んだスキル次第では、1時間でもパスのほんの一面なら習得できるかもしれない。高度なパスを身につけるには、目標を設けて、パスに含まれるスキルを毎日ひとつずつ制覇していくしかないのだ。


プロの世界で目的と目標のちがいがどのように表れるかを見てみよう。外科の研修医の訓練であれば、「手術を準備する」という目的を、「術前のチェックリストをチーム全員に当てはめて、小さなまちがいを特定、修正する」という目標に置き換えることができる。これが明確な目標だ。こうした目標に連続10回取り組むチームは、一般的な練習を10回連続でおこなうチームにたいてい勝る。


第三に、計測できること、管理できることに加えて、目標には専門的な指導がつき、そのうえで、ごく少数の項目を正しくやることに集中する。たとえば、外科の研修医に対しては「正しいやり方は、光源が切開面をまっすぐ照らしつづけるようにライトを調節することだ。調節をほかの人に頼むときには、チーム内で共通の合図を使う」というように指導する。グラウンドで選手に正確なロングパスをさせたいなら、しっかり足首を固めてボールを蹴り、フォロースルーで膝を上げなさいと伝える。こうした指示で練習の参加者は集中し、意図を持って練習することができる。たんに最後までやるだけでなく、成功するやり方に専念することができるのだ。


最後に、効果的な目標は練習前に定めておく必要がある。おそらくこれがいちばんむずかしい。多くの練習は「明日は何をしようか」と考えることで始まる(「今日の午後」の練習内容すら決まっていないこともある)。もしこの問いが出てくるのなら、目標のためではなく、ただやるためにやっているということだ。実行する理由がわからないかぎり、その練習内容が正しいかどうかを判断することはできない。明日やることではなく、最終的に何をなしとげたいのかと考え、その目標に到達する最善のルートを探るのだ。まず目標を定めておけば、練習内容を選んだり活用したりするときの指針になる。逆に、練習内容を決めたあとで目標を置くと、自己正当化の言いわけになる。