第2643冊目 成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール ダグ・レモフ (著), エリカ・ウールウェイ (著), ケイティ・ェッツイ (著)CommentsAdd Star


成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

成功する練習の法則―最高の成果を引き出す42のルール

  • 無意識にできるようになれば、創造性が解き放たれる


ジョン・ウッデンの次のことばが、ルール3の次の段階を的確に表している――「反復練習によってできた基礎の上に、個性と想像力が開花する」。意識せず効率よく動くために、体で覚えることの大切さを示したのがルール3だとすれば、ルール4は、「無意識」が仕事をしているあいだに「意識」がすることに注目する。1日のうちでもっとも創造的に考えているのはいつか、自分の胸に聞いてみよう。シャワーを浴びているとき、車を運転しているとき、歯を磨いているとき、ジョギング中――おそらくそんなときではないだろうか。つまり、すでに何千回とやって、もはや機械的にできることをやっているときだ。自動的に何をしているとき、心は創造的に考えていることが多い。さらに創造的になる方法は、すらすらとできなかった場面で心に余裕を持たせる、つまり、そういう状況で必要なスキルを自動化することだ。


アスリートはよく一定の経験と練習を積んだあと、試合の「スピードが落ちた」ように感じる。これはある時点から、複雑な動きにまわされる処理能力が減って、その分、新たに使える処理能力が増えたせいだ。ふと顔を上げると、フリーの味方や、パスコースが見えるようになる。よく出てくるスキルの自動化と創造性のつながりを示す例である。ヨハン・クライフの話を引用すると、もっとわかりやすい。


ヨハン・クライフはサッカー史で5本の指に入る偉大な選手であり、とりわけその創造性が讃えられた。試合中、当然こうするだろうと誰もが思うところでまったくちがうことをして、絶大な効果をあげた。あるインタビューでクライフは、若いころ自分よりすぐれていたが成功しなかった選手をあげてほしいと言われて、何人かの名前をあげたあと、こう言った。「彼らはとてもいい選手だった。だが、ある瞬間、ボールを2メートルではなく50センチ以内で動かさなければならなかったとき、つまり、50センチ動くとプレッシャーがかかって相手に奪われてしまうときに、もっとすばやく動く必要があった。もっと速くないとだめだったんだ」。


クライフは、彼らより自分のほうがクリエイティブだったと言っているのではない。プレッシャーがかかるときに、もっとも重要なスキル――20パーセント――の自動化ができていたと言ったのだ。そこで児童でできたので、やりながらほかのことを考えやすくなった。「創造性」は「練習」の別の姿であることが多い。もっと創造的になりたいなら、別の部分を自動化すると役に立つ。重大な局面で創造性を発揮したいなら、そういうときに必要なスキルを見きわめて自動化し、処理能力を創造的な思考に振り分けるのだ。