第2616冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著), マーヴィン カーリンズ (著), 西田 美緒子 (翻訳)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 強調のない手の行動


アルダート・ヴァリジほかの研究にある通り、腕の動きおよび強調の動作が少ない場合には、ウソが疑われる。問題はこれを測定する方法がないことで、特に一般の社会環境では難しい。それでも、腕の動きの変化がいつ、どのような前後関係で見られたか、特に重要な話題が出た後で見られたかどうかに、注目するといい(ヴリジ、二〇〇三年)。動きの急激な変化は脳の活動を反映するものだ。活発に動いていた腕が急に止まったら、落胆かウソはわからないが、何か理由があるはずだ。


私自身の経験では、ウソをつく人は尖塔のポーズをしない傾向がある。また、まるで戦闘機の射出座席に座っているかのように椅子の肘かけをきつく握って動かず、握りこぶしが白くなるほど身を固くしている人にも注目する。残念ながら、不快な思いをしている人が、会議室から飛び出すのは不可能に近い。数多くの犯罪捜査官の経験では、頭、首、腕、脚をほとんど動かさずに一箇所に固定し、手と腕で肘かけをしっかり握る行動は、ウソをつこうとしている人に共通してよく見られるものだ。ただしここでも、すべてがそうとは限らない(シェーファーとナヴァロ、二〇〇四年)。


面白いことに、人が断定的な口調でウソをつくとき、ほかの人に触れるのを避けるだけでなく、演壇やテーブルなどの「もの」に触れるのも避ける。私はテーブルにこぶしを叩きつけながら、「私はやっていない」とウソを声高に宣言した人を、見たことも聞いたこともない。よく見るのは弱々しく強調のない発言で、身振りも同じく小さい。ウソをついている人は、言っていることに対して自信も責任ももてない。考える脳(大脳資質)は欺くために言うことを決めたが、情動脳(大脳辺縁系――脳の正直な部分)はその策略に肩入れしないから、(身振りなどの)ノンバーバル行動を使って言葉を強調することもない。辺縁系の感情を打ち消すのは難しい。嫌いな人に向かって、満面の笑みを浮かべてみよう。なかなかできないのがわかるだろう。作り笑いと同じように、作り話に伴って現れるノンバーバルは弱々しくて消極的なものになる。