第2591冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著), マーヴィン カーリンズ (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 身の回りを的確に観察する


「妻が急に、離婚話を切り出したんだ。結婚生活に不満を持っているなんて、まったく気付かなかったよ」


「生徒指導の先生が、息子はもう三年も前からコカインを使ってるって言うのよ。息子に薬物の問題があるなんて、思ってもみなかったわ」


「この男と言い争っていたら、いきなり殴りかかってきた。そんなそぶりはまったく見えなかったのに」


「上司は私の仕事をとても気に入ってくれていると思ってたんです。クビになるなんて、考えもしませんでした」


以上は、自分のまわりの世界を効果的に観察する方法をまったく知らない男女の言葉だ。しかし実際には、そうした力の不足は当然だとも言える。私たちには、子どもから大人に育つ過程で、他人が見せるノンバーバルな手がかりを観察する方法を教わる機会がない。小学生にも高校にも大学にも、状況認識を教えるクラスはないのだ。運がよければ自分で観察眼を磨くことができる。けれども運がよければ、問題を避けて人生をより充実さえのに役立つ膨大な量の有益な情報を、デートの場でも、職場でも、家庭でも、見逃してしまうことになる。


さうわい、観察は学ぶことのできる技術だ。一生、不意打ちばかり受けながらクラス必要はない。しかもそれは技術なのだから、正しいトレーニングと練習によって向上させられる。観察眼が「不自由」だとしても、絶望することなない。もっと入念に周囲の世界を観察しようと、時間と努力を傾ける心づもりがあるなら、この分野の弱点は克服できる。


必要なのは、日常のごく当たり前な暮らしを観察すること、しかも「注意深い観察」をすることだ。身の回りの世界に気付くようになるには、受け身の姿勢を捨てなければならない。意識的に、意図的に行動しなければならない。それには努力もエネルギーも、達成しようとする集中力もいる上、力を維持するために絶え間ない練習も必要になる。観察は筋肉に似ている。使えば強くなるし、使わなければ衰えてしまう。観察の筋肉を鍛えれば、身の回りの世界をよりパワフルに解読できるようになるだろう。