第2590冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著), マーヴィン カーリンズ (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 身の回りを的確に観察する


これは、ノンバーバル・コミュニケーションを解読して利用したい人すべてにとっての、最も基本的な必要条件だ。


耳栓をして話を聞こうとするバカバカしさを想像してほしい。言葉は聞こえず、何を言われても通じない。だから、人の話に耳を傾けたいと思っている人は、耳栓をして歩いたりはしない! ところがノンバーバル行動の無言の言語を見るとなると、多くの人は目隠してをしているのも同然で、周囲を彩るボディーシグナルにまったく気付いていない。よーく考えてみよう。話し言葉を理解するには注意深く「観察する」ことが不可欠なのだ。ちょっと立ち止まって! とても大切なことだから、先を急がず、心に刻んでほしい。「注意深い(努力を要する)観察」こそが、人の気持ちを読んでノンバーバルな手がかりを正しくキャッチするための、絶対不可欠な条件となる。


問題は、ほとんどの人が目を開いて生活しているのに、本当の忌みでは見ていないことにある。あるいは、名探偵シャーロック・ホームズが助手のワトソンに言った、「君は見てはいるけれど、観察していないんだよ」という名ゼリフがそっくりそのまま当てはまる。残念なことに、大半の人は周囲を見ろとき、観察するという努力をほとんどしていない。だから周囲のわずかな変化を見過ごしている。相手のふとした手の動きや、思わず本心が表れたわずかな足の動きなど、身の回りにあふれている微細な表情の豊かさにまったく気付いていない。


事実、人が周囲を観察する力はとても貧弱なことが、さまざまな科学研究によって実証されている。たとえば、何かの活動が行われている最中に、学生のグループの前をゴリラの着ぐるみを着た男が歩いてみると、学生の半数はグループの中にゴリラがいたことさえ気付かなかった(シモンズとシャブリス、一九九九年)。


観察眼の乏しい人は、航空機のパイロットが「状況認識」と呼ぶもの、つまり常に自分がどこにいるかという感覚を持つ力が欠けている。そういう人は、周囲で起きていること、時には目の前で起きていることについてさえ、正確なイメージを描ききれていない。たくさんの人であふれかえった初めて目にする部屋に誰かを招き入れ、まわりを見回す時間を与えてから目を閉じてもらい、何を見たかを聞いてみるといい。たいていは部屋の一番目立つ特徴も思い出せないのだから、愕然とするばかりだ。


降って湧いたような人生を一大事に不意打ちを受けてばかりの人に会ったり、そんな記事を読んだりすることが多いのに、本当にがっかりする。訴えることは、たいていいつも同じだ。