第2579冊目 一瞬で自分を変える法  アンソニー・ロビンズ (著), 本田 健 (翻訳)


一瞬で自分を変える法 (知的生きかた文庫)

一瞬で自分を変える法 (知的生きかた文庫)

  • 人生は、自分で決めた値段、にしかならない


最近、ボストンでセミナーを開く機会があった。セミナーが終わって、私は真夜中のコプリースクエアを散策し、近代的な高層ビルや建国以来の古めかしい建物を見て歩いた。


すると向こうから男がふらふらとこちらに近づいてくるのに気がついた。どうやらホームレスやしく、酒の匂いをプンプンさせ、何ヶ月も髭を剃っていないようだった。


きっと金をせびられるに違いないと私は思った。案の定、男は近づいてくると、


「だんなさん、二十五セント恵んでくださいよ」と話しかけてきた。最初、私は二十五セントといえども、恵んでやるものかと思った。しかし相手は困っているではないか、いずれにせよ、二十五セントで何がどうなるわけでもないので、ここはひとつ男に喝を入れてやることにした。


「二十五セント? ほんとにそれでいいんだな」


「二十五セントぽっきりでさ」


私はポケットから二十五セント玉を取り出して、こう言った。


「人生は自分で決めた値段にしからならい」



その後ろ姿を眺めながら、成功する人と、失敗する人の違いについて考えた。私とこのホームレスとの差はどうだ。私は人生を満喫している。いつでも、どこでも、やりたいことをやり、好きなだけ好きな人と一緒にいられる。


彼はおそらく六十歳を過ぎているのに、路上生活をし、他人からの施しで生きている。


私は誰かに、「ロビンズ、君は真面目な男だから、夢のような生活を送らせてやろう」と言われたわけでもないし、人にはない能力や長所を誰かから与えられたわけでもない。酒に溺れたり、ホームレスになったりしたことはないとはいえ、私もかつてはあの男と同じような最悪の状態に陥ったこともある。


成功と失敗の分かれ目は、ある意味では、私が彼に言った言葉が示している。人生は自分が求める分しか与えてくれないのである。


二十五セントでいいと思えば、二十五セントしか手に入らないし、圧倒的な成功を手に入れたいと思えば、手に入れられるだろう。


私はこれまでの経験から、自分の状態を調節し、行動を制御できれば、どんなことでも変えられると確信している。人生に何を求めるべきかがわかれば、必ずそれを手にできる。


ボストンでの一夜から数ヵ月の間に、私は何人かのホームレスにその人の人生と、なぜ転落してしまったかを聞いてみた。そうしてわかったのは、人生には共通の課題があるということだ。ただ、それにどう対処するかによって違いが生まれるのだ。