第2577冊目 一瞬で自分を変える法  アンソニー・ロビンズ (著), 本田 健 (翻訳)


一瞬で自分を変える法 (知的生きかた文庫)

一瞬で自分を変える法 (知的生きかた文庫)

  • 「ペーシング」と「リーディング」で相手はあなたを拒絶できない!


効果的なミラーリングができるようになると、ラポールを築くだけではなく。相手のことが手にとるように理解できる。加えてペーシング(歩調あわせ)とリーディング(誘導)と呼ばれる方法を使えば、相手を思ったとおりに動かせる。


ミラーリングが相手の「動き」に合わせるのに対して、ペーシングとは相手の「スピードやテンポ」に合わせていく。


また、リーディングとはミラーリングやペーシングで相手に合わせた後、頃合いを見て主導権を握り、自分のペースに誘導していくことである。


こんな例がある。数年前、私の栄養関係の事業が軌道に乗り始めた頃、ビバリーヒルズに住むある著名な医者と近づきになった。


出だしでつまずいてしまい、彼はある企画についてすぐに決定を下すように求めてきた。しかし私は出張中で、しかもまずいことに決定を下せるのは私だけだった。


私のようの若造(当時、まだ二十一歳だった)に待ちぼうけを食らわせるのも気に入らなかったその先生は、ようやく私が出会った時にはすっかりへそを曲げていた。


私が彼のオフィスに入っていくと、彼は身体を固くして座っていた。身体中の筋肉が硬直していた。


私は向かい側の椅子に彼とまったく同じ姿勢で腰かけ、呼吸のリズムも彼に合わせた。彼が早口でしゃべったので、私も早口でしゃべった。彼は円を描くよように右腕を振るという変わったクセを持っていたので、私もそれを真似た。


その時の状況はお世辞にも良好とは言えないものだったが、話がこじれることはなかった。というのも、私が彼に会わせることで、ラポールを築くことができたからである。


そのうち、私は彼をリードできないか、試してみることにした。まず話す速さを落としてみた。すると彼もゆっくり話すようになった。


次に、私は椅子の背中にもたれかかった。すると彼も同じことをした。初めのうちは私が彼の真似をしていたのだが、ラポールが築かれると、彼のほうに私を真似させることが可能になっていた。


最後は、彼に誘われてランチを食べに行き、まるで長年の親友のように楽しい時間を過ごした。最初に部屋に入っていった時に、彼に忌い嫌われていたのが嘘のようだった。


この先生を相手に私が行ったのが、ペーシングとリーディングである。


ラポールが高まると、相手も知らず知らずのうちにあなたの動きに同調するようになる。


相手の世界に入り込み、ラポールを築いたら、それを利用して相手をリードするのである。