第2566冊目 入社1年目の教科書 岩瀬 大輔 (著)


入社1年目の教科書

入社1年目の教科書

  • チャンスをつかめる人になれ


以前から取引したいと望んでいたお客さまに、念願叶って懇意にしていただけるようになりました。ある日、あなたはお客さまから忘年会の誘いを受けます。お客さまが特に親しくされている方々との会食に、あなたも合流しないかと誘われてたのです。


あいにくその日は、2件の忘年会をかけもちしなければならほどスケジュールが詰まっていました。さらにもう一件の会食に顔を出すためには、先約の忘年会に腰を落ち着ける時間を短縮しなければなりません。お客さまは、誘いの言葉の最後にこう締めくくりました。


「比較的遅い時間までやっていますが、くれぐれも無理をしないでくださいね」


さて、あなたならどのような行動を取るでしょうか。


似たようなケースを僕も経験しました。


2件の忘年会に出席し、カラオケを歌ったため、少々声が枯れています。お酒を飲んだこともあって、眠気を抑えることはできません。時刻は1時を回っています。連日の忘年会疲れで、体調も良くありません。


それでも、僕は誘われてた3件目の会食に顔を出しました。会が開いたのは、午前4時を過ぎたころです。3件目の会食を主催したお客さまからは、末長くおつき合いしましょうという言葉をいただきました。


3件目の会食に参加した理由は簡単です。初めて取引したお客さまと、ビジネスシーン以外でコミュニケーションを取る絶好のチャンスだと考えたからです。初めて受けたお誘いは何があっても参加し、長くおつき合いをしていくための下地作りをしなければならないと思ったのです。


3件目の会食に参加することは、僕にとっての「勝負どころ」だったのです。


大事な局面を迎えている。いまは行かなければならない。勝負どころを的確に判断できない若者が増えていると感じています。


「すごく良いチャンスだから来いよ」


そう水を受けても、こんな答えが返ってくるとがっかりしてしまいます。


「その日はちょっと都合が悪いので、行けません」


あらかじめ決まっていた予定があるのですから、こういう返事も許されるのかもしれません。しかし、すべての予定をキャンセルしてでも行くべき場面があることを心に留めておいてください。勝負しなければならないときを知り、そのときは徹底してやってください。


「眠気も限界にきているので、今日は帰ります」


これでは失格です。やると決めたら、最後までやりきるのです。


もちろん、勝負どころを的確に捉える嗅覚が、初めから備わっているわけではありません。身につけるためには、経験豊富な上司の発した「良いチャンスだから」という言葉の重みをしっかりと受け止める必要があります。何気ない一言を受け流してしまっては、大事な局面を認識することはできません。


誤解のなきよう言いますが、僕は「飲み会の二次会には行かなくていい」と書きました。だからといって、何でもかんでも「行かなくていい」とは思っていません。この見極めが重要なのです。