第2342冊目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)


相手がより快適になれるように、できるかぎりのことをする。たとえば、小物や自分の服をいじる癖がある人は、話がこみいってきたときや、困った表情をするときに、シャツのボタンをいじるかもしれない。このような無意識の動作は、目の前の経験が生む不快さから気をさらすために、集中する対象を探しているのだ。そこで、彼らの近くに適当な小道具を置いていじるやすくすれば、あなたと話をしながら安心しやすくなるだろう。本人は気がつかないうちに、あなたとの会話に気楽さと心地よさを感じるようになる。


私は来客のために子供用の工作粘土を用意している。内気な人や、難しい会話になったときは、とくに効き目がある。私と話している途中で少しぎこちなさを感じたり、次第につのる不快感を和らげたいと思ったときに、相手は手の中の粘土に集中力をそらすことができる。


ロウソクや煖炉も、同じようにいい意味で注意力をさらす効果がある。だからこそ、快適さと安心がカギを握るロマンチックな場面では、ロウソクや煖炉が重宝されるのだ。炎のようにつねに動いているものは、うしろに何かあるのではないかと思わせ、会話から気をそらせたいときに代わりに集中する対象になる。BGMも、ある意味で似たような効果がある。


不愉快な話をするときは、ボディランゲージがカギを握る。先に説明したとおり、肯定的なボディランゲージを伴う否定的な評価は、否定的なボディランゲージを伴う肯定的な評価に比べて、はるかに前向きに受け止められる。ストレスの高い状況では、ボディランゲージは言葉よりはるかに大きな影響を与えるのだ。ストレス反応が活性化すると、脳の機能は原始脳が中心になる。原始脳は言葉やアイデアを直接理解しないが、ボディランゲージの影響は直接受ける。


不愉快な話をする際に適切なボディランゲージは、配慮や思いやり、理解、共感を示す誠意のボディランゲージだ。基本的には、優しさのカリスマを最大限に発揮する。話の内容が悪いほど、聞かさせる人があなたは自分たちのことを本当に理解していて、自分たちに寄り添っていると感じることが重要になる。そこで、善意と思いやりと共感のツールが役に立つ。

  • 優しさのカリスマにふさわしい精神状態になる。思いやりを持ち、それがボディランゲージに表れるようにする。
  • 相手の立場になってみる。彼らがどんなことを考えているのか、どんなふうに暮らしているのか、詳しく鮮明に想像する。
  • 善意と思いやりをイメージしやすくするフレーズを唱える。
  • 顔の表情と声のトーンと言葉で共感を伝える。


悪い知らせを告げる際にどのような言葉がふさわしいかは、伝えなければなららいメッセージによる。ほとんどの場合は先に説明したように、相手の世界の言葉やたとえを使って、自分と関連のあるメッセージだと思わせるテクニックが役に立つ。大勢の聴衆にメッセージを伝える場合は11章を参照すること。


やりとりをしているあいだはつねに、非言語と言語コミュニケーションの両方で思いやりと心遣いを表現する。状況によっては、不快感を和らげるために何をしたいか、本人に直接訊いてもいいだろう。いかにうれしくない話かということだけでなく、それが相手にもたらしうる悪影響も、あなたがよく理解していることを示そう。


優しさのカリスマは、相手だけでなく自分自身にも向けることができる。困難な経験を乗り越えるために学んだ内面的なツールを総動員して、自分のことも褒めて励ましつづけよう。あなたは最善を尽くしているのだから。