第2341冊目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

  • 悪い知らせを告げる


次に紹介するケースは、私にとって、トラブルの両サイドから直接話を聞くことができた貴重な経験でもある。


ある夏の午後、ザビエルは私のコーチングが始める際にこう切り出した。「数時間前に聞いた留守番電話のメッセージに、とにかくむかついているんです。折り返しの電話をする前に精神状態を落ち着かせるにはどうすればいいか、助言をもらえませんか? メッセージはスーザンからでsちあ」


スーザンは次のようなメッセージを残していた。「ザビエル、あなたが書いたメモについて話をしたいの。悪い知らせよ――こんな言い方をするべきではないんでしょうけど、あなたは侮辱されたと思うかもしれないわ。でも、もちろん、私は侮辱するつもりなんてないのよ。とにかく、折り返しの連絡をちょうだい」


スーザンのどこがいけないのか、わかっただろうか。1つ目は、かなり否定的な関連づけを自らつくっていること。彼女のメッセージは最初から最後まで不愉快だ。2つ目は、白い象の罠にはまっていること。ザビエルに、侮辱されたと「思わないで」と、先に告げている。私たちの脳は、まだ受け取っていない情報を処理することはできないから、ザビエルの頭には「侮辱された」という言葉がいちばん強く残る。


3つ目は、あいまいな言い方のせいで、ザビエルに最悪の状況を想像させたことだ。脳は否定的な面を見るようにできているから、「悪い知らせ」と聞けば自動的に、可能性のあるなかで最悪のシナリオを考えはじめる。


このケースの場合、スーザンも私のコーチングを受けていたので(私は彼らの部署のコーチングを担当していた)、彼女と会ったときに私は次のように話した。「ザビエルの立場になってみてください。留守番電話のメッセージで、自分が侮辱される悪い知らせがあると予告だけされて、詳しい説明はないままです。たしかに、あなたは彼の注意を引くことができました。でも、これから先、彼はどんな感情をあなたと関連づけると思いますか? あのメッセージを思い出すたびに、彼は悪い知らせに侮辱されるというメッセージを抱くでしょう。ザビエルにそういう関連づけをさせたいと、本気で思いますか?」


詳しい会話をするタイミングと場所を、いつも選べるとはかぎらない。しかし選べるときは、タイミングも場所も慎重に考えること。電話番号を押す前に、腰を下ろして話を始める前に、自分の話を聞いて相手がどんな精神状態になるかを、ほんの少しでいいから想像するのだ。


相手が忙しい中で疲れ切っていて、あなたに1日待つ余裕があるなら、1日待とう。私自身も、仕事がうまくいっている日と、体調を崩したり疲れたりしている日とでは、厳しい話を聞いても受け止め方が違うことを経験してきた。体調が悪い日は、そんな話は耐えられそうにないと思えた。些細なことが大ごとに感じるのだ。


悪い知らせを伝える際は、伝える状況に留意する。人は環境に抱いた感情を、そのときの経験に置き換える。できるだけ居心地のいい場所を選ぼう。駅や空港など、騒がしい場所で難しい会話をしないほうがいい。