第2327冊目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)


質問は前向きな話題だけにすること。人は、会話から生まれる感情と相手を結びつけて記憶するからだ。「離婚の話はどこまで進んでいますか?」といった質問は避けたほうがいいことは、本能的にわかるだろう。そうした後ろ向きな質問ではなく、前向きの感情を引き出しやすい質問だけをする。このテクニックは、質問をする側が会話の流れを導く主導権を握れる。


相手があなたのことを質問しはじめたが、相手に関する話題に戻したいときは、「跳ね返り」のテクニックを使う。質問には事実を答え、個人的な感想を加えたら、方向を転換して再びこちらから質問する。たとえばこんな具合だ。


「どこに引っ越すの?」


チェルシーに[事実]。近所に素敵な公園やパン屋があるのよ[個人的な感想]。あのあたりをどう思う?[方向転換]」


できるだけ長く相手を主役にすること。「相手に本人のことを話せば、何時間でも訊いているだけだろう」とベンジャミン・ディズレーリは言った。会話の最中に最も頻繁に口にする単語は、「私」ではなく「あなた」でなければならない。「私はニューヨーク・タイムズ誌で素晴らしい記事を読んだ」ではなく、「最近のニューヨーク・タイムズの記事はあなたにもおもしろいと思う」と言ってみよう。


同じ空間を共有していることを強調したいときは、言葉の選び方や表情を相手に合わせ、相手が関心のある話題を意識しながら、その分野の比喩を使うと効果的だ。たとえば、ゴルフ関係の人々に成功について語るなら、ホールインワンにたとえる。ヨットに乗る人々なら、大惨事を難破にたとえる。


私のクライアントでドイツ銀行に勤めるアナリストの女性は、上司と良好な人間関係が築けそうにないと相談してきた。彼女の話によると、上司はぶっきらぼうで、振る舞いはまるで軍人だという。「日常の会話でも戦争用語をよく使っています」。そこで私は、彼女も軍事用語を使うように助言した。「忠実な兵士」や「優秀な中尉」になったつもりで、上司との会話を少しずつ軍事用語を増やすのだ。すると、1週間も経たないうちに、上司との関係が著しく改善されたという。上司は彼女を、「自分の部隊の一員」で頼れる戦力だと見なすようになったのだ。語彙をほんの少し増やしただけで、彼女は大きな見返りを手にした。