第2328冊目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

  • 美しく去る


第一印象が会話の雰囲気を決めるように、去り際も会話全体に影響を与える。カリスマ的な話し上手は、周りの人を心から楽しませ、しだいにあなたと離れたくないと思わせる。実際、カリスマ性が高い人ほど、新しいファンになかなか解放してもらえない。これは多くのカリスマの深刻な悩みでもある。どうすれば会話を優雅に終わらせることができるだろうか。


まず、長引かせないこと。会話を終わらせるタイミングを先送りしていると、互いに緊張を感じて居心地が悪くなる。いちばん簡単な方法は、言うまでもなく、会話を切り上げる公的な理由をつくることだ。その口実を用意しておくために、パーティーで裏方のボランティアや運営の仕事を引き受ける人もいる。「仕事中」だと言われれば、2、3分以上の会話は期待しないだろう。


会話を優雅に終わらせるもうひとつの方法は、価値のあるものを提供することだ。たとえば、記事や本、ウェブサイトなど、相手の役に立ちそうな情報を教える。相手が自分の知人に会いたければ紹介する。自分の関係する組織で、相手に講演を依頼できなそうなところを紹介する。相手にふさわしいと思う賞の話をする。このように価値を提供すると、相手はあなたに誠意と善意を感じ、あなたは寛大な人だという印象とともに会話を終わらせることができるだろう。


たとえば、相手が話し終わるのを待って、こんなふうに言う。「今の話を聞いていると、ぜひ見てほしいウェブサイトがあるんです。名刺をいただければ、サイトのアドレスをメールします」。実際に名刺をもらった直後が絶好のタイミングだ。「よかった! すぐにメールします。今日はお会いできて楽しかったです


あるいは、同じ会場にいる人と引き合わせることになったら、「さっそく紹介させてください」と言って、その人のところへ一緒に行く。相手はあなたの親切に前向きな感情を持つはずだ。また、移動しながら会話に新しいメンバーを引き入れることもできる。2人より3、4人のほうが抜けやすいものだ。


会話が終わった後に、自分が言ったことや、言わなければよかったこと、次の機会に言いたいことなどをあれこれ考えても時間の無駄だ。人々の心に残るのは、言葉や発言の内容ではなく、あなたと話しているときの感覚なのだから。


実際、1週間前の会話の内容を正確に思い出せなくても、そのときの感覚は覚えているだろう。私たちの中に残るのは言葉ではなく、会話が刻みつけた感情だ。