第2321冊目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

  • 体が心を変える


ここまでは主に、心が体にどのような影響を与えるかに注目してきた。私たちの心と感情は、さまざまなかたちで振る舞いやボディランゲージ、表情を変える。そして、反対に、体が心に影響を与えることもできる。感情とボディランゲージの関係はとても深く、特定の振る舞いや表情をすれば、対応する感情が実際に湧いてくる。イメージトレーニングのおいて、適切なイメージが対応する感情とボディランゲージを生むように、特定のボディランゲージは対応するさまざまな感情を引き出せる。


ハーバード大学コロンビア大学の心理学者チームの研究によれば、力強い自信にあふれた体勢を取り、力強い声で話して手振りも加えると、自信とパワーをより強く感じさせるような生理的反応が実際に起きる。それに対し、気後れした服従的な振る舞いをすると、正反対の生理的反応が起きた。


自信のあるボディランゲージをすれば、本当に自信が高まるのを感じるだろう。その感覚がボディランゲージに影響を与え、さらなる自信を発信する。それがさらに気持ちを高揚させ、このサイクルが確立する。あとは必要なときにサイクルを動かせばいい。


ある親友にこのテクニックを紹介したところ、彼女は「とてもよくわかるわ!」と喜び、マドリードでの経験を話してくれた。彼女はそれを「ミス・ピギーの瞬間」と呼んでいる。人形劇映画「サ・マペッツ」に登場するミス・ピギーは女優のブタ。彼女は観客の前に出る直前に鏡の前で立ち止まり、身づくろいをしてから宣言する――「私ってキレイ!」そして胸を張り、顔をあげて、華々しい舞台に登場するのだ。私の親友の「ミス・ピギーの瞬間」は、まさに女優のような経験だった。


マドリードでグランビア通りを歩きながら、私は疲労と空腹と孤独を感じていた。おしゃれに鈍感な服装で、自分が酷いアメリカ人の見本みたいだと思えてきた。でも、そういう態度はもちろん自分にとって良くない。そこで、お忍びでマドリードに来た映画スターになりきったのよ。背筋を伸ばし、胸を張って、顔をあげ、王妃ならこんなふうに振る舞うだろうと想像して、すると突然、今の今まで場違いに思えた服装が個性的なファッションに思えてきて、みんなも真似をするに違いないとさえ感じた。そして、通りを歩く私を、人々が振り返るのよ! 男性に道をたずねると、よろしければ案内しましょうかと言われる。ほんの一瞬で、私は野暮ったくてみすぼらしいよそ者から、誰もが振り返る映画スターに変わったのよ。


より自信のありそうなボディランゲージをするだけで、周囲に力強い人だと思われると私が説明すると、自信というのは持って生まれる資質か、幼いころの経験で培うものだろうと心配するクライアントもいる。ボディランゲージを変えるだけなんて、自信があるふりをしているにすぎない、と。


しかし、ボディランゲージを変えるだけで本物の自信を手に入れることができ、自信が高まっていることをすぐに実感できるのだ。最初はぎこちなく思えるかもしれない。練習なしでいきなり自転車にまたがるような感じかもしれない。しかし、これらのテクニックを実際に使えば、きっっと効果がある。そして使いつづけるうちに慣れてきて、第2の本能と言えるくらいに定着するだろう。