第2322冊目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

  • 集中力のカリスマ――プレゼンスと自信


ペイパルの共同創業者で現在はテスラ・テーターズのCEO(最高経営責任者)を務めるイーロン・マスクは、集中力のカリスマのお手本だ。本人に訊けば、自分はとても内向的だと答えるだろう。テスラの開放的なオフィスで、マスクのデスクは右奥の隅にある。2台の大きなモニターが囲いのように配置され、周りから彼の姿は見えない(ほとんど席がいないのだが)。


しかし、モニターの後ろから現れるマスクは、プレゼンスと集中力をフルに発揮している。彼と向き合えば、彼が注意力を研ぎ澄まし、あなたの言葉にじっと耳を傾け、すべてを吸収しようとしているのを感じるだろう。彼が何を言わなくても、こちらを理解していることが伝わってくる。非言語のボディランゲージが、あなたの言葉を漏らさず聞いて理解していると思わせるのだ。


集中力のカリスマは、主にプレゼンスを感じさせる能力にもとづいている。相手のそばにいて、相手の言葉を聞いてもらい、理解されていると感じる。このカリスマの威力を見くびってはいけない。驚くほど強力なのだ。


集中力のカリスマは、ビジネスでも大きな武器となる。ビル・ゲイツのそばで働いてきたあるエグゼクティブは、私に次のように語った。


カリスマのある人は堂々としていて、圧倒的な個性で場を支配すると思われることが多い。でもビルは、地味な外見で、体格もたくましいわけではなく、典型的なオタクに見えるが、彼は確かに場を支配する。彼が姿を見せれば、すぐにプレゼンスを感じる。その人が部屋に入ってくると全員の目が釘づけになるのがカリスマなら、ビルはカリスマだ。人を引き寄せ、自分の話を聞いてほしいと思わせるのがカリスマなら、やはりビルはカリスマだ。


元IBM社長のジャック・キーラーは、集中力のカリスマのもうひとつの重要要件である、敬意を伝える能力がずば抜けていた。カリスマの基礎のひとつは、他人が自信を持てるようにすることだ。キーラーは、人々に自分の意見が尊重されていると感じさせ、自分は重要な存在なのだと思わせるコツを知っていた。彼は、最も若い社員も周知を共有するべき知恵を持っていると心から信じたいた。あるエグゼクティブは次のように語る。「キーラーが工場の労働者やエンジニアのところに行くと、彼らをとても尊重して敬意を払っていることが見てとれます。そして、彼らのほうもキーラーを尊重する。キーラが来ると、エンジニアの顔がぱっと明るくなるんです」