第2308冊目 入社1年目の教科書 岩瀬 大輔 (著)


入社1年目の教科書

入社1年目の教科書

  • ミスをしたら、再発防止の仕組みを考えよ


入社して数ヶ月の間は、上司や先輩から叱責されることが必ずあるでしょう。


あなたがどんなに優秀でも、最初からすべての仕事を完璧にこなすことは、現実的には難しいからです。むしろ避けて通れないのなら、意識がかわるチャンスだと前向きに捉えてください。


ハーバード・ビジネス・スクールでの授業中、あるいは授業のないときに仲間と議論をしていると、外国人はよくこういう言い方をしていました。


「I disagree(きみの意見には反対だ)」


口角泡を飛ばしなら、傍目には好戦的な口調で、相手の意見を完膚なきまで否定しようと躍起になります。しかし、ひとたび授業や議論が終われば、何事もなかったかのように仲の良い友人に戻るのです。


叱られるということは、あなたの人間性や能力を否定しているわけではなく、仕事上のある行動が間違っているということを指摘されただけのことです。あなたの仕事をより良く改善するためのフィードバックだと捉えればいいのです。


ゴルフのスイングフォームを改善しているとき、コーチから指摘されたポイントを意識していないと、叱責されることがあるかもしれません。


「そんなスイングじゃダメ!」


「何でさっき言ったポイントを忘れてしまうんだよ!」


コーチの口調もおそらく厳しいでしょうが、選手の人格を否定しているわけではありません。上司からの叱責もまったく同じです。人によっては厳しいい言い方をする人もいるでしょうが、上司はあなたの人格を攻撃したわけでも、能力を否定したわけでもないのです。


誤りを正してもらったのですから、その叱責を真摯に受け止め、反省し、感謝すべきです。へらへら笑っているのもどうかも思いますが、だからといっていたずらに落ち込む必要もありません。そんなことよりも重要なのは、同じ間違いを二度を繰り返さないことです。


初めて犯した誤りであれば、それほど叱られることはないと思います。問題は「この間も同じことを言ったよね」と言われてしまうようなケースです。どんなに温厚な上司でも、同じ間違いを二度繰り返すと、さすがに本気の叱責が飛んでくるでしょう。


「これから気をつけます」


そう言うのは簡単ですが、これだけだと必ず同じミスを繰り返してしまう可能性があります。


上司から何を指摘され、自分はなぜそうしてしまったのか。叱責されたことを注意深く受け止め、再発防止のために何をすればいいのか熟考するのです。


僕が考える再発防止策は、仕事をやり方を変えることです。ミスが起こらない仕組みを作り出すことだと思います。


上司に頼まれた仕事に、ミスがあったとします。次回から気をつけるようにしても間違えてしまう恐れがあれば、ファーストフードのトイレなどでよく見かけるチェックシートを作って、一つ一つ確認するもの方法です。


書類に押す実印が必要だと言われたのに、自宅から持ってくるのを忘れて迷惑をかけてしまいました。翌日は何としても忘れてはいけないのですが、忘れっぽい人間だという自覚があります。


その場合、近くの同僚に「悪いんだけど……当日の朝メールしてもらえますか」と依頼するのです。忘れないようにしようと思っても忘れてしまうので、第三者からメールを入れてもらうという仕組みを作ったのです。僕の場合、最初は家族にお願いしました。付箋に「ハンコ!」と書いて、玄関のドアに貼っておくのも手かもしれません。


企業としての再発防止策でも同じことが言えます。組織で仕事をしている中でミスが起こるのは、個人に責任があるのではなく、仕組みに問題があるのです。


人間がやることですから、ケアレスミスは気合いだけでは防げません。叱られたときは、仕事をどのように仕組み化し、同じミスを繰り返さない方法を考え出すことが重要になってくると思います。