第2300目 入社1年目の教科書 岩瀬 大輔 (著)


入社1年目の教科書

入社1年目の教科書

  • 仕事は根回し


根回しという言葉にどのような印象をお持ちになるでしょうか。


かつてのサラリーマン社会における悪しき慣習。マイナスイメージで捉えている人が圧倒的だと思います。


言葉の印象は確かに悪いかもしれませんが、行為としては必要不可欠なものだと僕は考えています。論点をより深く掘り下げるために欠かせない、かつ全体の意思決定を短縮する作業だからです。


一般的に、会議で結論を出すまでには、いくつかの作業フローがあります。

  1. 情報を共有する
  2. 論点を頭出しにする
  3. 論点に対する出席者の考えを醸成させる
  4. 議論する
  5. 結論を出す


会議の場で、これらの行程すべてをやろうとするにはさすがに無理があります。会議にはそれほど十分な時間を費やすことができないからです。


「企画内容はわかったけど、それ売れないんじゃない?」


あなたがいくら「大丈夫です。売れます」と必至に訴えたところで、説得力はまったくありません。根回しをして「売れないのでは?」というフィードバックを事前に得ていれば、こんな対応ができるのではないでしょうか。


「事前に売れ舞のではないかというご懸念をいただきましたが、他社の類似商品はこれぐらいに伸びています。われわれがアンケートしたところ、こういうデータが得られました。売れない可能性がまったくないわけではありませんが、売れる可能性は高いと考えられます」


こうした発言が出れば、会議はアンケートやデータを踏まえ、市場の動向を勘案しながら販売に踏みきるか否かという議論に移ります。根回しをいたところで、議論は次のレベルに進むことになります。


「基本的なことの合意形成」


「対処可能な反論をつぶす」


根回しとは、行程③と④の間に、こうした作業を入れ込む行為なのです。





よく見られるのは、企画を提出しても説明ばかりに時間を取られてしまって議論を深める時間がなく、結論を次回に持ち越して終わる会議です。次に開かれる会議でも似たような議論が繰り返され、再び持ち越しで終わってしまいます。これでは、いつまで経っても結論が出ません。


会議の場を最大限に生かすには、実のある議論と結論を出すこと、つまり?と?に特化する必要があると思います。そのためには、?から?の行程を会議の前に済ませ、参加者からのフィードバックを開いておく必要があります。これが根回しと呼ばれるものなのです。


フィードバックに不安材料があった場合、その不安は準備することで反論できるかもしれません。いきなり会議本番に臨んで、上司からこう言われたどう反論しますか。