第2230目 FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学 ジョー・ナヴァロ (著), トニ・シアラ・ポインター (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

  • よどみない行動は自信、敬意、信頼性を感じさせる


予測不能なギクシャクした動きをする相手に、人は快適さを感じない。ある日、建設現場で働く人たちを見ていると、現場監督がやたらにウロウロ動きまわり、芝居でもしているかと思えるほど、ほとんどヒステリックに腕を振りまわしながら怒鳴り、作業員に文句をつけていた。誰でも人がキレるとどうなるかを知っているし、キレた人を見たことがあるだろうが、気分のいいものではない。作業員たちの顔には、意気消沈して敬意の感じられない表情が見てとれた。監督がいなくなったあとで作業員たちが発した言葉は、ここには書けないものばかりだ。オーバーな芝居がかった手の動きと身振りは、気が散るばかりで、相手に敬意をなくさせる以外にはほとんど役立たない。


SWATチームの指揮官をした経験から言うと、作戦中に最も嫌われるのは、行動は身振りが大げさ、突飛、衝動的、または行き当たりばったりの人物だった。私たちは最悪の条件下に置かれたとき、平常心を保って落ち着いた決断を下せる人を尊重する。SWATの訓練で言われているように、「よどみない動きは速い」。武器をかまえるにしても、クライアントに応対するにしても、常によどみない行動を心がけたい――よどみない動きは速いのだから。


警官、看護師、航空機の乗務員、警備員、教師、両親が、ノンバーバルでよどみのない行動を見失えば、尊敬されなくなる。怒鳴る、金切り声を上げる、グッタリするほど疲れて見える、腕を大きく振る、身振りが極端に大きいなどは、どれも「私は自制心を失っています」と表明しているようなものだ。そんな人間に進んで信頼を寄せたり、喜んで従ったりする人がいるだろうか? 私たちは冷静さと自制心を保てる人を尊敬する。


9・11の後で多くのアメリカ人が当時のルドルフ・ジュリアーニ市長を慕ったのは、ニューヨーク市を襲った悲劇を前にしてうろたえることなく、あらゆることをよどみなく取りしきっているように見えたからだ。同じく、国民はUSエアウェイズのパイロット、チェズレイ・B・「サリー」・サレンバーガー三世にも魅了された。彼はエンジン停止に陥った航空機を、冷静によどみなくコントロールし、ハドソン川でほぼ完璧な不時着を成功させた。よどみない行動はすばらしく、最高のプロフェッショナルのなせる技だ。簡単ではないことを、簡単であるかように見せてしまう。