第3091冊目 FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学 ジョー・ナヴァロ (著),‎ トニ・シアラ・ポインター (著),‎ 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

  • 動きかたの威力


すばやく、効果的に、よどみなく動くことで、周囲に与える印象が大きく変わる。私はクリスマスの直後に、全国的に有名なスポーツ用品店に品物を返しに行ったことがある。私の前には九人もの客が並び、たったひとりのレジ係が販売と返品の両方に対応していた。そのとき店のスピーカーから、ある店員に名指しでレジに入るようにと指示する店長の声が響きわたった。だが期待した客たちの目をくぎ付けにしたのは、ノロノロとレジのあたりまで歩いてくる店員の姿だった。それだけ大勢が順番を待っているというのに、あたりをまっすぐ気にすることなく、実にゆっくりと歩いてくるその光景は、およそ信じがたいものだった。


私も含め、列に並んだ客の怒りが頂点に達したのは明らかだった。当然ながら、この店員のレジでのサービスも同じようにのろかった。その動きかたは、彼が客をどう思っているか、自分の仕事をどう思っているかを、正確に伝えていた。私たちの動きかたがいつもどれだけはっきりと周囲に何かを伝えているかは、この出来事によってよくわかる。私たちは――相手について、自分の仕事について、さらに自分自身についてまで――考えていることや感じていることを、まわりに発信し続けているのだ。


のろい動作は具体的な損失につながる。機会を逸し、マーケティング戦略を台無しにし、製品開発を遅らせ、会計ミスを誘い、サービスを低下させ、表品の到着や発送の遅れを招き、さざまなま経費のかかるミスを誘発する。私は経営者たちに、組織にとってスピードは不可欠だと話す。常にスピードの基準に達しない社員がいるなら、やめさせたほうがいいと助言する。その場にふさわしくない行動は、雇用主にとっても、ほかの従業員にとっても、そして――何より大切なことだが――顧客にとっても、フェアではない。


スピードは態度と結びつくことが多い。態度の悪さは、必ずと言っていいほどサービスの悪さにつながる。現在のように競争の激しい買い手市場の就職戦線では、同じ給料で態度の優れた人材を、ビジネスをあるべき姿で代表し、スピードを重んじる人材を、雇うことができる。